スマホ脳 ― 2022/10/08
先月のある土曜日でした、お昼12時ちょっと過ぎ。
マンションに住んでいるのですが、「お届け物です」というドアホーンからの声でマンション入り口のドアを解除。宅配便の届け物かな、と思っていた。
しばらくしてピンポーンと玄関の呼び鈴。すぐにドアを開けるも誰もおらず、ドアのそばにマクドナルドの紙袋がポツンと置いてあった。頼んだ覚えはない。
すぐに外を見るとエレベータに乗りかけている後ろ姿の若い女性がいた。「部屋、間違っていますよ」と声をかけると戻って来てくれた。
コロナ感染防止のためか、デリバリーの支払いはネット上で決済し、対面で受け渡しはせず玄関先の置いていく決まりになっているのでしょう。
女性は「ここ、〇×▽号室ですよね」とスマホを私に見せながら言う。スマホのオーダー内容が書かれた画面を見ると確かに部屋番号は合っている。が、マンション名が違う。
道を挟んだ隣のマンションだった。
翌日の日曜日。外出から帰るとドアの横にビニール袋が置いてある。妻に聞くと「昼頃、ピンポーンの音で出たら、かつ丼が入ったビニール袋が置いてあった。また間違ってる」と言う。
配達者はすでに去った後だったのでどうしようもなくそのまま放置。2日連続同じ間違いするか?と思ったのと同時に注文主さん、今週の土日のお昼は連続デリバリーなんだな、と。
しばらくすると「ウーバーイーツです。間違ってすみません」と若い男性が訪ねてきた。なぜ同じ間違いするのか聞くと、スマホの地図上の住所設定が間違っていたとのこと。
今やいろんな手続きや情報伝達がスマホの画面の中で行われますが、便利な一面、頼りすぎると上記のような弊害も出てきます。
読んだ本の感想が続きますが、覚えているうちにということで紹介したいと思います。
「スマホ脳」、スマホへの依存症について書かれたものです。
著者はスウェーデン人なのでスウェーデン国内の実情を述べていますが、世界中の国々で同じような状況だということです。
特に若者は、一日に平均4~5時間もスマホでSNSなどに費やしている。なぜ、スマホに夢中になりやめられないのか?
根本原因は人類の脳のしくみにあると著者は断定しています。
脳内で情報を伝えるドーパミンと呼ばれる神経伝達物質があります。
やる気を引き出し行動を起こすと活性化され、そして目的を達成すると幸福感や快感を得られます。この幸福感や快感にはエンドルフィンというこれまた別の神経伝達物質が寄与しています。
これらは人間が生存するために本能的に備わっている物質なのです。
数十万年もの間、人類は狩猟と採集で暮らしていました。このドーパミンを原動力に狩りで獲物を捕らえ、食べられる果実や木の実などを探し回っていたのです。手に入り空腹を満たすことができれば達成感を感じる。
でも、近代社会では自ら狩りをしたり果実を採集したりする必要はありません。衝動が娯楽や嗜好に向けられます。酒、ギャンブル、ドラッグなどへの依存症はよく知られたところです。
そしてスマホが普及し出すとスマホが対象になります。フェイスブック、インスタグラム、ツイッターなどのいわゆるSNSです。
また人間には、他人に認められたいという承認欲求が誰にも備わっています。「いいね」はそれをくすぐるわけです。
さらに「自分の事を語りたい」という欲求もあります。
スマホは人間の本能と欲求に応えてくれる手軽で便利なツールなのです。
アップル創業者のスティーブ・ジョブズはじめ、IT企業のトップは自分の子供たちにはデジタル機器の使用をきびしく制限していたと言われています。
つまり与える側はスマホなどのデジタル機器には依存性があることをよく知っているのです。利用してもらうためにそう作っているから当然ですね。
著書の後半には対策が書かれていますが、個人の意志の力だけではどうにもならないようです。
この本の翻訳者はスウェーデン在住の日本女性なのですが、子供の学校ではスマホは朝、学校に預けて教室に持ち込み禁止にされているそうです。
実は使わなくてもスマホを机の上に置いておくだけでも理解力や記憶力が落ちることが実験で検証されていて、単に使用禁止にするだけでは十分ではないのです。完全に隔離しないといけない。
これはなんとなくわかります。ダイエット中、買い置きのお菓子がテーブルの上や冷蔵庫の中にあると物事に集中できない、そしてちょっとだけならいいかと我慢しきれず食べてしまう。
でも一切買い置きがないとあきらめがつく。夜、パジャマから服に着替えてコンビニに買いに行くか、とまではならないのでは。
実は一度、スマホを落としたことがあります。
自転車で帰宅後、ないことに気づきましたが、走ってきた路上のどこかで落としたようです。幸い、拾った人が警察に届けられていて、翌日には手元に戻りました。
時々持ち忘れて外出するくらいなので私にはスマホ依存症はありませんが、もしこれが依存症の人だったら紛失したりするともうパニックでしょうね。
私の場合は、誰の電話番号も憶えていない、紙の電話帳さえないという事実、これではスマホなしでは緊急時に連絡の取りようがないなという現実に愕然としました。
データのスマホ依存という別の意味で依存症があったわけです。妻の携帯番号くらいは憶えておくか。
ばってんT村でした。
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前回ブログの冒頭、本屋さんの店員が「手帳」と「店長」を聞き間違えた話をしましたが、外に出ると図らずも面白い目に合うことがあります。
私はよい意味で、犬も歩けば棒に当たる、と勝手に解釈しています。
初めて読む人もいらっしゃると思いますので、以前ブログで書いた同じ話もあって恐縮ですが改めて私の経験を。
言葉に関することなので、チョット参考になるかもです。
●コピーをください
若い頃は、仕事の出張で頻繁に韓国に行っていました。
単独で電車やバス、タクシーで移動したり、街中の食堂でご飯を食べたりする機会も多かったので、最低限必要な韓国語を事前に勉強したり、現地で憶えたりしていました。
1980~90年代、日本に追いつけ、追い越せで韓国では日本語の勉強熱が高かった時代です。
それもあってか、仕事先では一定の職級以上の人は日本語が問題なく話せたので業務上の会話は日本語でした。
ある顧客の会社で打ち合わせをやっていた時のことです。使っていた資料のコピーが必要になり、近くにいた女性社員(日本語は話せない)に自分の手元の資料を指さして「コピーチュセヨ」とお願いしました。
韓国語でチュセヨ、とは「ください」の意味です。
女性は「ネ~(はいの意味)」と言ってそのまま部屋から出ていきました。
しばらくすると、その女性は紙コップに入ったコーヒーを持ってきて、私の前に置いたのです。
コピーを頼んで、なぜコーヒーが出てきたのか私はわけがわかりませんでした。
これを見て、打ち合わせに同席していた人が笑いながら「T村さん、coffeeは韓国語でコピと言います」
「では複写する意味のコピーはどう言うんですか?」と聞くと「それはカピと発音します」
日本語と同様、韓国語では外来語をそのまま使うことが多いのですが、韓国語特有の発音になります。
例えばスポーツのゴルフは韓国語ではコルプと発音します。これなど、さらにわかりにくいと思いますね。
●グラスをください
これはフランスに出張した時のことです。
フランス語が堪能な日本人の商社員を含め数人でレストランに入りました。
飲み物を含めた注文後、ガラスコップが一つ足りないことに気づき、ウェイターに「One glass please」と英語で言いました。
しばらくしてウェイターが持ってきてテーブルに置いたのは、アイスペールに入った氷だったのです。氷をつかむトングも付いていました。
氷は注文していないけど、と不思議に思っていると商社員の方が笑いながら
「あ~、たぶん英語のglassを誤解したのだと思います。フランス語でグラスと言うとアイスクリームや氷を意味します」
あとで調べてみると、言われるようにフランス語にglaceという単語がありました。
●ホテルの名前はアルベルゴ
これははじめてイタリアに出張した時のことです。
現地の商社員の方にミラノの空港でピックアップしてもらい、郊外の小さな町のホテルにチェックインしました。
翌日、顧客先で仕事の終了後、相手をしてくれた人が「車でホテルまで送っていきますよ。ホテルはどこですか?」と聞かれました。
会話は英語です。
ホテルの表の看板に「ALBERGO」と書いてあったのを覚えていたので「アルベルゴに泊まっています」と答えました。
これ、しっかり記憶していたんですが
すると「OK、それでホテルの名前は?」と再度聞いてきます。
私が困惑していると、彼がわかった、というような表情で「ホテルをイタリア語でアルベルゴと言うのですよ。」
日本語で言えば、単に「旅館」とだけ書いた看板がかかった宿みたいなものなのでしょう。
私が泊まったこの「アルベルゴ」は食堂もあって、夕飯時になると主人が部屋のドアをノックして知らせてくれるような小さな宿でした。
ドアを開けると、「マンジャーレ」(イタリア語で「食べる」の意味)と言って私に向かってジェスチャーで食べるしぐさで準備ができたことを教えてくれるのでした。
●ちょっと待って
アメリカの顧客先工場で日本人の現地駐在員と一緒に行った時のこと。
顧客と打ち合わせをやっている最中、要所要所でこの駐在員と二人で日本語だけで話すことがありました。
相手に返事する前に見解を合わせておく時や聞かれたくない内容の時です。
すると後から「チョットマッテ、はどういう意味ですか?」と聞かれたのです。我々の会話の中から聞き取ったみたいです。
この「チョットマッテ」、拗音と促音が入る日本語、発音的にアメリカ人にも印象に残ったのでしょう。
確かに会話でちょくちょく使うと思います「調べるからちょっと待って」とか「ちょっと待って、考えさせて」とか。
意味を教えた後は、一緒に作業などしている最中、そのような場面が来たら嬉しそうに「チョットマッテ」と日本語で言ってくるのでした。
日本に来る外国人観光客だと、「アリガトウ」の次によく聞く日本語は「イラッシャイマセ」ではないでしょうか?
これはどこで聞かれたかは忘れたのですが、「エートはどういう意味ですか?」という質問もありました。
うん、確かにしゃべっている合間に挟むな。「えっ~と、それはね・・・」、当時は説明できませんでした。
「え~」とか「あの~」はFiller(フィラー)と呼ばれる発話の合間に挟む、それ自体意味を持たない言葉です。
内容を発話前に頭の中で思い出したり、整理したり、また相手にこちらが考え中だということを認識してもらうためにも有効なものです。
多用すると聞き苦しくなるのでなるべく使うなとも言われますが、これやらないと発話の途中で沈黙ができます。
特に顔が見えない電話の時はなにかあったのか?と思われたりします。
コミュニケーション、おもしろくもあり悩ましくもあり、ですね。
ばってんT村でした。
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