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機械翻訳vs人間翻訳2022/01/24

 この1月にNHKで「わげもん~長崎通訳異聞~」という4話完結でドラマをやっています。
わげもん=和解者=通訳者の意味で、通詞だった父の失踪の謎を追って江戸から長崎に来た若者が主人公。

 長崎、出島での交易相手だった国のオランダ語以外にも捕鯨で立ち寄るアメリカの英語、ハワイ語、唐人屋敷の中国語など数か国語が取り交わされる場面が多々あり、日本への漂着民から英語を習うシーンもあります。

 当時は対人で相手国の言語を習い、独自の教科書や辞書を編纂したりと苦労して生きた外国語を学んでいたのですね。

  出島資料館に展示されているオランダ語入門書(複製)

 さて、現在では機械翻訳も進歩して翻訳は飛躍的に簡単になりました。その機械翻訳についてですが、以前ブログで比較紹介をしたことがあります。
 実際に英文を日本文に翻訳させての比較でしたが、私の主観ではDeepLという翻訳サイトが非常に優秀でGoogle翻訳と同等かそれ以上でした。

 DeepLは世間でも評判がいいらしく、最近もネットでレノボ・ジャパン(パソコンメーカー)社長のベネットさんという方のブログでおもしろい記事を読みました。
ちょっと一部抜粋します。

例文として
In a single decade, from 2010 to 2019, the number of farmers in Japan dropped by nearly a million, leaving the country at a crossroads. Meanwhile, there are global challenges looming on the horizon: shrinking amounts of arable land, a growing global population, and of course, the ever-present specter of climate change.

この文章の翻訳として次の2通りが示されていました。
① 2010年から2019年までの10年間で、日本の農家は100万人近く減少し、日本は岐路に立たされています。一方で、耕地面積の縮小、世界人口の増加、そしてもちろん、気候変動という世界的な課題も迫ってきています。

② 2010年から2019年までのわずか10年ほどで、日本の農家人口は約100万世帯ほども減少し、危機的な岐路に立たされています。そしてそれと同時に、耕作可能な農地の減少、世界人口の増加、そして気候変動といった世界規模の課題にも直面しています。

①がDeepLによる機械翻訳、②が人間の翻訳です。
①の機械翻訳も違和感がなく、ほとんど人の翻訳と同じではないでしょうか?

 この二つの翻訳文から「英語スキルは今後も必要か?」というのがこのエッセイのお題でした。
結論としてベネットさんは「今後も外国語のスキルは必要。むしろ重宝がられる」と書いていました。

上記2文章で特徴的な違いは
DeepL翻訳  10年間で     
人間翻訳  わずか10年ほどで

DeepL翻訳 日本は岐路に立たされています。
人間翻訳  危機的な岐路に立たされています。

人間翻訳の方は「わずか」や「危機的な」という原文にはない用語を付け加えています。これは翻訳者が全文の主旨(環境問題、農業人口問題の深刻さをテーマとしている)を理解して意訳したものと言えます。

 一方、DeepLのような機械翻訳では、文章の背景や目的はわかりませんので文字通り機械的に訳すわけです。AIにも学習機能はあるでしょうが、この文章で言いたいことは何か?というレベルの思考までには至っていません。

 AIと違い人間翻訳の強みはここにあり、外国語のスキルはこれからも必要になる、というのが筆者の結論なのです。

さらに私が感じたのは、接続詞Meanwhileの解釈です。
DeepL翻訳  一方で     
人間翻訳  そしてそれと同時に

Meanwhileは「一方で」と「同時に」の双方の意味を持つのですが、この例文の場合は人間翻訳の「同時に」の方が自然だと感じます。

 それにしてもここまで機械翻訳がほぼ正確に訳してくれるのであれば、翻訳作業は機械翻訳した文章を人が推敲して加筆修正する、という流れに今後はなるだろうと想像します。

 実際、会社ではマニュアルやビジネス文書ではそのような使い方をされています。ただし、機械に訳させた後の推敲には、例えば英語⇔日本語であれば自身の母国語は当然、相手側の外国語もある程度のスキルはやっぱり大事だと思います。

 ところで冒頭に述べたドラマ「わげもん」では、各国語の言語アドバイザーが役者さんを指導しています。その中に長崎弁もあったのですが、聞いていて中には字幕がないと意味がわからないだろうな、というセリフもありました。
 いくつか挙げると
・やぐらしか → わずらわしい、うるさい、の意味
・せからしか → やぐらしか、に似ています。面倒くさい、うるさいの意味。
         福岡だと「しぇからしか」になりますね。
・くらす → なぐる、の意味。暮らすではありません。
・あいはだいか?(見知らぬ相手を見て言ったセリフ)
 →あれは誰だ?

 ちなみにドラマのロケは京都や滋賀県の彦根でもやったらしいです。琵琶湖と湖岸が海の設定にでもなったのかな。
ばってんT村でした。  

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