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直訳できない日本語2023/02/02

 習得が難しい外国語として上位に挙げられるのはポーランド語、フィンランド語、ハンガリー語、ロシア語、アラビア語、日本語、中国語と言われています。
 学習者の母国語によって何が難しいかは違ってくるでしょうが、英語、フランス語、イタリア語も結構上位に挙がっています。

 直訳できない日本語という内容でちょっと考えてみました。
これはYoutubeで見たのですが「恋の予感」という表現。この4文字が英語だと以下のように75文字になるという。

The sense one can have upon first meeting a person that the two of you are going to fall in love

訳というより説明文ですね。

 私の生徒さんのフランス人に「恋の予感」の意味を説明したのですが、フランス語にもぴったりする言葉はない、と言っていました。

「一目ぼれ」とはちょっと意味は違います。これは英語だと love at first sight
ちなみにフランス語で「一目ぼれ」を何と言うか聞いたところ、
coup de foudre

カタカナ書きだと、クドゥフードル というような発音でした。

coup は攻撃、foudre は雷の意味。つまり雷の一撃というところでしょうか。
また、coup はクーデター(政変)のクーでもあります。

日本語は、日常のあいさつや社交辞令的な表現も直訳は困難なものが多いようです。

お世話になっております
よろしくお願いします
お疲れさまです
など

ちなみにパソコンで機械翻訳してみると

お世話になっております Thank you for your help

よろしくお願いします  
候補が4つ出ましたが、物事を頼む時だと Please help me 
仕事上の社交辞令だと I look forward to working with you でしょうか。

お疲れさまです は thank you for your hard work
と出ました。

英語だとどれも help か thank you のようなストレートな単語になってしまいます。
でも日本人ならもっといろんな感情や思いが入り混じった複合的な意味で使っていますよね。

 「先輩、後輩」という単語も中国、韓国を除き、そのような上下関係の概念がない欧米では相当する言葉がないようです。

 やはり言葉はその国の歴史、文化的背景の影響を受けているので直訳できないものは数多くありそうです。
 たとえば「もったいない」は今や日本語でそのまま使われている国もあります。

「微妙」「こだわり」「隅に置けない」、最近だと「萌え」、これらも直訳は困難でしょうね。

 逆に外国語から日本語に直訳できない単語や表現もあることと思います。
少し今回の趣旨とは外れますが、最近読んだ本の紹介を。

 図書館でふと目にした「老人と海」、タイトルの前に「新訳」と書かれてありました。
最後のページを見ると、出版が2022年9月とあり、まだ1年も経っていません。
今更、なぜ新たな訳本がでるのか?また、なにより読んだことがなかったのでさっそく借りて読んでみました。



 漁に出て、巨大なマカジキと対峙する老人を描いた物語で、ストーリーは単純。
ご存じノーベル文学賞受賞作家アーネスト・ヘミングウェイの超有名な文学作品ですね。

 個人的には物語以上に興味深く良かったのが翻訳者の解説でした。なにせ巻末の解説が67ページもあるのです。
 「老人と海」のストーリーは釣りを一生の趣味としたヘミングウェイ自身の体験と漁師からの見聞がベースになっています。
モデルとなったキューバの漁村や料亭は実在のものです。

 英語の原本では"boy"と書かれた老人を慕う若者が登場するのですが、これまでの訳本ではそのまま「少年」と訳されていました。
この翻訳者はそれを「若者」と訳したのです。
その根拠が解説の多くのページを割いて説明されていました。

 アメリカでは成人した男性をboyと表現するのは一般的であること、ヘミングウェイの他の小説や他の作家もそのように使っていること。
 物語の中の老人との会話の内容や時代背景などから見ても成人した男性だと判断した、ということが細かく具体的な根拠を示して書かれていました。

 「老人と海」が映画化されるとき、ヘミングウェイは脚本に修正や意見を書き込んだのですが、あるシーンのところで「boyという表現は不正確だ」と書き加えていました。
これも翻訳者が「若者」と訳した根拠の一つとしています。

 従い、それまで歴代の翻訳本で少年っぽいしゃべり方に訳されていた話し方も若者らしく訳しなおした、と説明されていました。
 他にも漁師言葉は使わなかったり、老人が漁の最中に口に出した独り言と心の中でつぶやいたことを区別したところなど。
タイトルに新訳と書かれた理由が分かった気がしました。

 日本語が外国語ではどう訳されるのか、生徒さんに聞いてみるのもおもしろいと思います。
ばってんT村でした。

ChatGPT2023/02/24

 最近、話題になっているChatGPTというのをご存じでしょうか?
人工知能(AI)がチャット(対話形式)で質問に答えてくれるというものです。

 今でもGoogle検索など、いわゆる「ググる」で調べものはできます。
でもChatGPTの大きな特徴は、直接質問に答えてくれる、というところです。
文章の作成力は半端なく、人間の作成したものと違いがわかりません。

 アメリカのIT企業が開発したものなので表示画面は英語ですが、難しくはありません。
質問は日本語で入力し、日本語で返事が来ます(問い合わせた言語で回答が来るそうです)
パソコン上でだれでも無料で使えるので、さっそく登録して使ってみました。

こんな画面です。下の空白欄に質問を入力します。


試しに、前回のブログで話題に出した小説「老人と海」について

アーネスト・ヘミングウェイの「老人と海」のあらすじを400字以内で書いてください

と入力しました。

回答はこんな画面です。少し間があって(考えている?)、一文字ずつ人がタイピングしてい
るかのように表示されていきます。



回答をコピーしたものが下記。確かに400字以内に収まっています。

「老人と海」は、キューバのハバナに住む老人サンチャゴが、84日間の漁師生活で大物マグロを捕獲するまでを描いた小説である。

サンチャゴは運が悪く、何度も釣りに出ても何も捕れない日々を過ごしていたが、最後の日になってついに大物マグロを釣り上げる。しかし、彼の小さなボートはマグロの重みに耐えられず、海上で繰り広げられる激しい闘いの末にマグロを失ってしまう。

サンチャゴは疲れ切って帰路につくが、それでもマグロを失ったことを悔い、孤独な漁師の生き方や自分自身の老いを考える。サンチャゴが港に帰ってくると、周囲の漁師たちは彼を尊敬し、彼の勇気と決意を称える。サンチャゴはマグロの骨を持ち帰り、それを村に見せることで自分の釣りの成功を示し、自分自身に対する自信を取り戻す。

この小説は、人間の生きる意味や自己超越の重要性を探求した、ヘミングウェイの代表作の一つとされている。

以上ですが、次にこんな依頼をしました。
アーネスト・ヘミングウェイの「老人と海」の読書感想文を400字以内で書いて

返ってきたのが下記、400字は越えてしまっているが・・・

「老人と海」は、アーネスト・ヘミングウェイの代表作の一つであり、深い哲学的意味を持つ小説です。

主人公のサンチャゴは、長い間何も獲らずに漁を続けていましたが、最後の漁で非常に巨大なマグロを捕まえます。しかし、そのマグロは鮫に食われてしまい、彼は何も持たずに帰ることになります。この小説は、人生の喜びと悲しみを表現しています。

私はこの小説がとても印象的だと思います。特に、サンチャゴの孤独と忍耐力に感銘を受けました。彼は何年も漁を続けていますが、何も獲れずにいたため、他の漁師から嘲笑されていました。

しかし、彼は希望を失うことなく、続けることができました。最後に、彼は巨大なマグロを捕まえますが、それが鮫に食われてしまい、何も持たずに帰らなければならなくなりました。この出来事は、成功と失敗が人生でつねに同居していることを表しています。

また、この小説は、人生の喜びと悲しみを表現していると感じました。サンチャゴは、漁に出ることで自分自身と戦い、自己超越を求めています。彼が捕まえたマグロは、彼の成功の象徴であり、希望と喜びを表しています。

しかし、それが鮫に食われてしまい、彼は何も持たずに帰らなければならなくなりました。これは、人生がいつも完璧な結果をもたらすわけではないことを示しています。

全体として、「老人と海」は、生きることの意味や目的について考えさせる作品であると感じました。サンチャゴの忍耐力や決意を見て、私たちは自分自身も同様の精神力を持つことができるかもしれないと思わせてくれます。
私はこの小説を読んで、自分自身についても深く考えることができました。

以上ですが、これを読んだら先生、「この生徒、よく書けているな」となるでしょうね。

 これでわかるように楽して宿題がかたづけられます。
さらに同じ質問を再度すると、回答は少しずつ違う文面になっているのです。複数の生徒がChatGPTに同じ依頼をしても違う感想文が来るということです。

 実際、英米の名だたる大学では論文にChatGPTを使うことを禁止しています。
言論統制が厳しい中国ではChatGPTそのものの使用が禁止されるのではないかという記事も見ました。

 アメリカ企業が作ったものなので基本データは英語です。従い他国の言語では正確性が今一つと言われています。

 一つ、ためしに確認してみました。昨年の7月にブログでも紹介した「モンティ・ホール問題」

 これはアメリカの某テレビ番組の中で車を賞品としてプレゼントする、というもの。
3つあるドアの後ろのどれか1つに車が隠されていて、1つドアを選び当たっていたらもらえる。
1つのドアが選ばれた後、司会者が残り2つのドアの中からハズレのドアを1つ開けて「今ならあなたが選んだドアを変えてもよい」と言う。
選択を変えた方がよいか、そのままの方がよいか、という問題。
これを訊ねてみました。

モンティホール問題とは何? と質問。ChatGPTからは下記の回答が来ました。

モンティ・ホール問題とは、以下のような問題です。
3つのドアがあり、そのうち1つのドアの後ろには車が、残りの2つのドアの後ろにはヤギがいます。あなたはドアを1つ選んで、それを開けます。
この時点で、ホストは残りの2つのドアのうち1つのドアを開けて、そのドアの後ろにヤギがいることを示します。
そして、あなたにはドアを変えることができるか聞かれます。あなたがドアを変えた場合、車が当たる確率は変わるのでしょうか?

この問題は、初めてアメリカのテレビ番組『Let's Make a Deal』で出題され、モンティ・ホールという司会者の名前から名付けられました。
モンティ・ホール問題には正解があり、正解は「ドアを変えた場合のほうが、車が当たる確率が高くなる」というものです。
これは直感的には理解しにくいものの、確率論的な証明があります。

以上が返事だったのですが、読んでみると、3行目の説明が間違っています。
「あなたはドアを1つ選んで、それを開けます。」とありますが、選んだドアを開けるのは一番最後です。この時点では開けません。
それと状況の日本語表現に所々違和感があります。

そこで、英語で同じ質問をしてみました。

質問はシンプル
What is Monty Hall problem? 

返事は下記、確かに英語で質問すると英語で返ってきました。

The Monty Hall problem is a classic probability puzzle that goes as follows:

Suppose you are a contestant on a game show. The host, Monty Hall, shows you three doors. Behind one door is a valuable prize, like a car, and behind the other two doors are less valuable prizes, like goats. You pick a door, but don't open it yet. Then, Monty opens one 
of the other two doors, revealing a goat. He asks if you want to switch your choice to the remaining door or stick with your original choice.

The question is: Should you switch doors, or stick with your original choice? Intuitively, it may seem like it doesn't matter whether you switch or not, since there are two doors left, but the correct answer is that you should switch. By switching doors, you increase your chances of winning the car from 1/3 to 2/3.

The Monty Hall problem has been a source of controversy and confusion because the answer seems counterintuitive to many people. However, the problem can be explained using conditional probability, and the optimal strategy has been proven mathematically.

英語だと適格に説明されています。そして4行目
You pick a door, but don't open it yet.
(あなたはドアを選択します、しかしまだ開けません)としっかり書いてある。

うわさは本当でした。結局、英語以外の他言語だと自分で内容を最終確認する必要があるようですね。

もう一点、回答の情報量を確認してみました。
NHK「チコちゃんに叱られる」で出された「料理になぜみりんを使うの?」
を質問してみました。下記が回答

みりんは日本料理によく使用される甘味料の一つで、独特の味わいを持ちます。
一般的に、料理にみりんを使う理由は以下の通りです。

1.香りと味わいを強化する:みりんは、独特の甘みと香りを持ち、食材の風味を引き出すことができます。
さらに、みりんを使用することで、調味料やスパイスなどの他の味付けを減らすことができます。

2.風味を柔らかくする:みりんにはアルコール分が含まれており、食材の繊維質を柔らかくする効果があります。このため、肉や魚などの食材を煮たり炒めたりする際に、みりんを加えることでより柔らかく仕上げることができます。

3.色を艶やかにする:みりんを使うことで、料理に艶やかな色合いを与えることができます。
特に、照り焼きや甘酢あんなどのソースにみりんを使用することで、料理に光沢感を与えることができます。

4.酸味を抑える:みりんは、料理に酸味を加えることなく、旨味を増やすことができます。
例えば、酢やレモン汁の代わりにみりんを使用することで、料理に酸味を加えすぎることを避けることができます。

以上のように、みりんは食材の風味を引き出し、味を調整し、料理を美しく仕上げることができるため、日本料理をはじめ、様々な料理に使われています。

ここまでが返事。

 味、香り、色合いなど一般的な答えなのですが「チコちゃんに・・・」で求められていたのは「煮崩れを防ぐ」という答えでした。
 これも理由にあげてほしかったな。でも煮崩れを防ぐ、というのはウンチクの類で元々の理由ではないのかもしれません。

 AIは学習することで知識(データ)が増えていくので、まだこれから賢くなっていくのでしょう。
それにしてもしっかりした文章になっています、機械が書いたとは思えない。そのまま使えます。

 今や、既存の法律に従って正誤が明確に回答できるような法律相談などはオンラインでAIが回答しているところもあるそうです。
コンピューターと会話する近未来の世界がもう来ている、そんな印象を受けました。

 さらに機械翻訳も進歩してきていますが、通訳者・翻訳者が要らなくなる時代も来るのでしょうか?
 でもがんばって勉強して自らの口から発した外国語が通じた喜びが感じられなくなるのはちょっと寂しい気がします。
ばってんT村でした。

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