漂流 ― 2021/02/02
帰省もできずステイホームとなった今年の正月休みでしたが、事前に図書館から大量の本を借りて読んでいました。
その中で「漂流」という小説が非常におもしろかった。
吉村昭 著(故人)、読んだ版は50刷のものですが、実は初版はもう40年ほども前です(著者をご存知の方なら何を今頃と言われるかもしれませんね)

これは史実を基にしたノンフィクション小説です。
江戸時代、日本国内の物資の輸送には千石船が活用されていましたが、シケに弱く遭難も多かったのです。
大半の遭難者は漂流中に溺死か餓死するか、どこかの島に流れ着いても餓死や病死するかでした。
運よく外国に流れ着いたり、救助されたりして異国で日本語の教師や通訳になった者もいたという話は以前のブログ「蚕と戦争と日本語」で紹介したとおりです。
「漂流」の主人公は長平(ちょうへい)という青年。長平24歳の天明5年(1785年)、米俵を積んで4人で土佐(高知)の赤岡村から出帆します。ところが途中、嵐のため遭難、十日以上漂流して無人島の鳥島(とりしま)に流れ着きます。
鳥島の位置は図の下から2番目。東京から約800Km離れている

日本沿岸には太平洋に向かって黒潮が流れていて、漂流地点によっては伊豆諸島付近を通過するため運よくこの辺の島々にたどり着く漂流者もいたのです。
鳥島は火山島で岩が主体の無人島ですが、アホウドリの産卵地として知られています。このアホウドリとわずかに獲れる魚貝や海藻で長平は生き延びます。
そしてなんと12年後に故郷に生還を果たすのです。それも救出されてではなく、自力で。
自力で脱出するには船しか手段はありません。
彼は、数年後に鳥島に漂着した遭難者らと協力して船を造ることを決断したのです。後から来た漂流者が船から大工道具類を持ち出せたことがきっかけとなりました。
でも、材料となる木材は? 釘は? 帆は? 造船場所は? これらにどうやって対処するのか。総勢15名が乗り込む船ですから結構なサイズになります。
実際、船を完成させるまで数年を要しています。この間の描写が読んでいておもしろい。
さて、長平のように遭難した後に生還した者は、その間の苦労をねぎらってもらえるのかと思いきや、逆に幕府のきびしい取り調べを受けたそうです。
キリスト教が禁教の江戸時代、異国に救われキリスト教徒になって帰国したのではないかという疑いが晴れるまで拘束されたそうです。
当時の詳細な記録が残っていたため、このような小説も描けたものと思います。著者の吉村昭の小説は記録小説とも言われ、記録をつぶさに調べて小説のベースにしています。
ロシア領に漂着して10年後に帰国を果たした「大黒屋光太夫」も吉村昭の小説です。
さて、漂流者で最もよく知られているのは長平と同じ高知県のジョン万次郎ですよね。
江戸も時代は下って天保12年(1841年)、14歳の万次郎は5人で漁船に乗っていて遭難し、同じこの鳥島に漂着します。
彼らは運よく、約半年後にアメリカの捕鯨船に救出されました。
話は脱線しますが、当時アメリカは捕鯨大国でした。灯油やろうそくの原料、機械の潤滑油となる鯨油が目的です。クジラの体内から油を搾取してしまうと後は廃棄していました。
(日本が肉、内臓、皮、歯などほとんどを無駄なく活用していたのとはえらい違い)
ジョン万次郎についても過去に何人もの作家が題材として書いていますが、一番詳しく描かれているのは山本一力の「ジョン・マン」でしょう。アメリカそして帰国後の幕末の日本で波乱万丈の一生を送ったジョン万次郎。

なにせ複数巻に分かれていて今も現在進行形で、1年1巻のペースで出版されています。これまでにたぶん7巻まで出ているはずですが、いまだ完結していません。
記録の確認やアメリカ現地取材など時間をかけ丁寧にやられているので、このような長期に渡る分冊になっているようです。
これ、全巻買っていくと相当な出費になるので、私は図書館でその都度、借りて読んでいました。
が、次の巻が出るころには前巻までのストーリーを忘れていたりするので、一旦読むのを中断。完結後に最初から一気読みしようと思っています。
ばってんT村でした。
ラオスで習字 ― 2021/02/19






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