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八月十五日に吹く風2021/08/28

 緊急事態宣言発令でさっそく図書館が休館。
 それより前に数冊借りていたのでまだよかった。さらに8月は雨が多く外出もままならず読書も進みました。

 その中から「八月十五日に吹く風」を紹介したいと思います。

 史実に基づいたストーリーで登場人物は実在、戦記ものですが人間ドラマだと感じました。
まず、第二次大戦中にこのような実話があったとは知りませんでした。

 アメリカ領のアリューシャン列島内、アッツ島、キスカ島の2島を日本軍は占領していたという事実、ここを足掛かりにアメリカ本土に進撃しようとしていたのです。

         本書より抜粋

 アメリカ軍は2島を奪還するためまずアッツ島を包囲し総攻撃を仕掛け、アッツ島の日本軍は全滅します。
 次の標的、キスカ島も物資や食料の補給路を断たれ日本軍は孤立し全滅するのも時間の問題でした。

 この状況を見て日本本国ではキスカ島に残された陸軍、海軍の約5,200名を救出することが決まり、大規模撤収作戦が始まるのです。
 正面から向かっていけば、戦闘は避けられずまず救出は困難。計画した作戦は濃霧に紛れて密かにキスカ島に接近することでした。

 総司令官は木村昌福(まさとみ)少将。それまでも数々の作戦を成功に導き評価も高かった。
的確な判断で指揮を執り、なにより部下思い、人命を第一に考える軍人だったと言われます。

 霧が発生することが作戦に不可欠だったため、気象専門士官の竹永一雄少尉(小説では橋本という仮名になっている)という方も巡洋艦に乗り込んでいました。
 この二人のやりとりが興味深い。

 作戦が成功し7月29日に日本軍が撤退してしまったことを知らないアメリカ軍はキスカ島奪還のためその半月後の8月15日に上陸作戦を実行したのです。
 当然、島はもぬけの殻。小説のタイトルの八月十五日は終戦日ではなく、1943年のこの日のことを言っています。

 物語中にはアメリカの視点から見た描写もあるのですが、日本語の通訳として従軍したロナルド・リーンという二十歳の若者が登場します。
 捕虜の通訳や日本軍が残した文書などの翻訳に携わるのですが、この若者の実名はドナルド・キーン。

 18歳の時、英訳された「源氏物語」を読んで魅了されたことが日本に興味を持つきっかけとなりました。
 海軍語学校で日本語を学び、その後海軍情報士官として翻訳局に赴任することになるのです。

 ご存じの方もいらしゃると思います。
 長い間、日米を行き来していた日本文学研究者・日本学者のドナルド・キーンさんは2012年に日本に帰化され、2019年に日本人として96歳で亡くなられました。
 日本文化の欧米への紹介で多くの実績があり、外国人として初めて文化勲章も受章され、身近なところで言えば京都の名誉観光大使もされていました。

 日本語、日本文化を通じてこのような縁ができるというのも不思議なものです。
ばってんT村でした。

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