ベネチアのバスと船 ― 2019/07/07
イタリアを題材にした前回のエッセイ「パスタぎらい」のちょうど続きという感じでイタリアを旅行した時の体験について書いてみます。
これまで仕事の出張やプライベートで訪れたのは
ミラノ、ベネチア、フィレンツェ、ローマ、ナポリ、ポンペイ、バーリ、プロチダ島、地名忘れた(ヴェローナの近く、ガルダ湖湖畔の町)、バチカン市国(正確には別国ですが)、
というところです。
イタリアは見どころがたくさん、料理はおいしい、人は気さくだし、家族のきずなも強く日本人の感性に合うと思います。
日本同様、海に囲まれシーフードも豊富でお米も食べる。
イタリアの中で、ほとんどの人が行きたいところ候補の上位にあげるのはベネチアではないでしょうか?
ご存知のように運河を縫ってつくられた水の都で多数の島々からなっています。車は走っておらず、交通手段は船のみ。行ってみて非日常が味わえる別世界だと感じました。見方によっては巨大なテーマパークとも言えます。
ただし、ベネチアの島内のホテルや観光客向けレストランなどはツーリスト価格で非常に物価が高く、この点でも非日常的です。
ベネチアまでは鉄道が通っていて、私はベネチアの一駅手前にあるメストレというところにホテルをとりました。ベネチアを離れればホテル代はベネチアの半額以下です。
例えれば、京都観光に来たけれどホテル代が高いので大津駅近くのビジネスホテルに泊まるようなものです。
黄色のこじんまりした駅前ホテル、近所に中華料理屋もあり食事面でも助かった
ホテルは駅前でしたが、ベネチアまでは鉄道よりバスのほうが本数が多いのがわかったのでバスで行くことにしました。
朝、フロントにいた年配の女性に停留所の場所を英語で聞いたところ、英語が通じません。「ホテルなのに英語が通じないのか…」
こちらもイタリア語は話せないし、そこでベネチアの方角を指さして「ベネッチア、ブス、ブス」と連呼したらわかってくれてちゃんと教えてくれました。
英語をローマ字読みすれば大体当たらずとも遠からずのはずと思い、BUSをブスと言ったのです。
正確にはイタリア語でAUTOBUS(アウトブス)と言うらしく、この時はブスだけで通じましたが女性に対し何度「ブス」を連呼したことでしょう。
バスは普通の路線バスなので地元の人が通勤や日常の足に利用しています。このような機会に自国と比較したり、地元の日常生活を観察できるのもおもしろいものです。
バスには事前に切符を買って乗るようになっています。運転手は運転だけが仕事で、降りる乗客の定期券を確認したり切符を回収はしないのです。
日本のように降りる時に料金を現金で支払うようにはなっていません。車内に小さな刻印機があって、乗車した時乗客がそれに切符を通して打刻しなければなりません。
乗り降り自由でやろうと思えば無賃乗車もできるわけです。
ただし、時々、検札員が抜き打ちで任意の停留所から乗り込んできて車内で「切符を拝見」と全員を確認してまわります。違反していたら高額の罰金(日本円で7~8千円)を払わされます。
観光客も同様です。知らなかった、は通用しないのです。
検札員の恰好は普段着ですが、持ち物や雰囲気でわかります。途中の停留所からたまたま乗り込んできた場面に一度遭遇したのですが、その姿を見た一人の若者が猛然と出口扉にダッシュして降りてしまいました。
無賃乗車だったのでしょうね。
一方、ベネチアでの移動手段は「ヴァポレット」という乗り合い水上バスになります。切符の要領はバスと同じです。
私は72時間(3日)パスを事前に購入しました。これはホテル・ベネチア間のバスでも使えて重宝しました。
旅行者にはこのような乗り放題パスが非常に便利です。
何といってもベネチアではこのヴァポレットで好きなところで乗り降りして街中を散策するのが最高です。
真っ先に向かうのは世界一美しい広場と言われるサン・マルコ広場でしょうか。回りにあるサン・マルコ寺院や宮殿、美術館、特徴のある橋などを見てまわり、疲れたらカフェで一休み。
世界最古のカフェで、カフェラテ発祥の地とも言われる有名なカフェ・フローリアンに行ってみました。夏は屋外テーブルも出ていて、生演奏もあります。
ちょうどその演奏の時間帯だったので屋外テーブルでコーヒーを注文、飲みながら生演奏を聞いてしばし心地よい気分に浸っていました。
頃合いを見てさてそろそろ行くか、とお勘定を頼んだのですが、請求書を見て驚くことになります。
「何…?」 ウェイターが持ってきた請求書を見ると、コーヒー以外にもなにやら金額が書いてあります。
税・サービス込みのはずだがと思い書かれた項目の英文を読むと、どうも屋外のテーブルチャージ代と演奏代のようです。トータルで日本円換算したら1,000円以上した記憶があります。
あの演奏、タダじゃなかったんだ、だったらもっと長居すればよかった。高くついた一杯のコーヒーでした。
水上バスのヴァポレットは地元の人の足でもあります。バスや電車同様、優先席もあるのです。
この時期は夏のバカンスシーズンだったためか、乗るヴァポレットはいつも観光客で満員でした。ある乗り場からまさにこの図にあるような杖をついた老人が乗ってきたことがあったのですが、彼はすぐにこの優先席に向かいました。
しかし、すでに満席で優先席にも観光客が座っています。しばらく目の前に立っていてもいっこうに席を譲らない観光客を見て、ついに老人が杖を振り回しイタリア語で怒りを込めてまくしたてました。
イタリア語がわからなくても言っていることは想像できます。優先席の観光客はポカンとした顔をして、この人何を怒っているの、という表情でしたが、やっと気づいたらしくすごすごと立ち上がっていました。
観光客には一生に何度も味わえない非日常の空間でも地元の人にとっては毎日繰り返される日常生活なのだな、とつくづく思いました。
ベネチアでしか体験できないことと言えば、ゴンドラがあります。カップルで乗って、ゴンドリエーレ(船をこぐお兄さんやおじさん)に歌でも歌ってもらったら気分は最高でしょうね。
昼間40 分で80ユーロ、夜40分で100ユーロ程度らしいです。1ユーロ=130円とすれば最低でも1万円程度ですね。
ちょっと乗ってみたいだけなんだけど…という旅行者には、もっと安いのがありますよ。なんと2ユーロ、およそ260円です。
渡し舟乗り場
もちろん安いのには理由があって、実は運河を横断する渡し舟です。でもれっきとしたゴンドラです。地元のイタリア人に交じって、運河横断2~3分ほどのショートショートトリップです。
私もこれ、乗ってみました。地元の人に交じって波に揺られるのもいいものです。
また、ベネチアにも住民がいるわけでして、当然のことながら野菜、果物、海産物などの市場もあるのです。
これら日用品や食料品のお店への運搬手段もボートになります。
ベネチアを歩いていると観光地である表の顔と生活の匂いがする素顔がすぐ隣り合っているのを感じます。これもおもしろいところです。
ベネチア本島から少し離れたところにも魅力的な島々があるのですが、長くなるので次回にお話ししたいと思います。
ばってんT村でした。
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