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浮世絵コレクション2019/09/15

天王寺の大阪市立美術館で「メアリー・エインズワース浮世絵コレクション」というのが開催されていることを最近になって知り行ってきました。

この美術館に行くのはフェルメール展以来です。

 

 

メアリー・エインズワースは、アメリカ人女性で多数の浮世絵を収集したコレクターです。

 明治39年(1906年)に来日したのをきっかけに収集を始め、葛飾北斎や歌川広重など有名な浮世絵師の名作を含む多数の絵を集めました。

 収集された1,500点ほどの版画はアメリカの美術館に寄贈されて、そのうちの200点ほどが今回展示されています。

 

 特にコレクションの過半数は歌川広重の作品とのことで、展示も1/450点ほどは広重作品でした。

 

 初めて見て興味深かったのは数枚をつなぎ合わせた連続もの。1枚の絵がざっくりA4サイズくらいですが、それを横に2枚、3枚、あるいは5枚、長いものでは7枚つないで一連の絵にしてあります。

 例えば、喜多川歌麿の5枚続き(正月、桃の節句、端午の節句、七夕、重陽の節句)

 

  

これも初めて見ましたが、同じ版で摺り色が違う2枚が並べて展示してあるのが3点ありました。

 広重の「名所江戸百景 両国花火」---1枚は川面を暗く花火を明るく、もう1枚はその逆。

同じく広重の「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」、「東海道五拾三次之内 日本橋朝之景」

2枚を比べて違いを見るのもおもしろいと思います。

 

 私が気に入ったのは、

 喜多川歌麿の「柿もぎ」---タイトルそのまま、柿をもいでいる様子があたかも動き出しそうな感じがします。


 広重の「東海道五拾三次の内 御油 旅人留女」---強引に旅人を引き留める宿の女を描いたもの。ユーモラスで漫画チック、笑えます。


 「浅草田甫酉の町詣(あさくさたんぼとりのまちもうで)---遊女の控え部屋から外を眺めるネコ、左下の襖のそばに見えるのはかんざしで遠くに見えるのは富士山ですね。


ショップで手ぬぐいを買ってしまいました。 

  

  さらにメアリー・エインズワースが浮世絵を収集していた時代の1900年初めごろの美術品売買のための目録が展示してあります(アメリカの冊子なので英文)。

それを見ると浮世絵が300ドルとか800ドルで売買されているのがわかります。

 当時の金額なので、今の価値に置き換えて数十倍だとすると安くても1枚数十万円でしょうか。

 メアリー・エインズワースはええとこのお金持ちの娘さんだったのですね。

 

 それと、この展示会の入場券で美術館の2階も観られますので行ってみてください。肉筆の美人画や江戸時代の化粧道具が展示してあります。化粧道具に施してある蒔絵が美しいです。

 

 3時間以上美術館にいたでしょうか、楽しめました。9/29までなので興味のある方はそれまでにどうぞ。

 

最後に、これも最近知ったのですが心斎橋に大阪浮世絵美術館というのが7月にオープンしています。現在、東海道五拾三次の全作品を一挙公開しているそうです。

京都にも京都浮世絵美術館がありますが、そこでも北斎のイベントをやっていますので興味のある方はネットで確認してみてください。

ばってんT村でした。


言葉の国イラン2019/09/29

8月のブログで書いた「アラビアンナイト」の舞台の一国でもあるイランですが、この国に関するおもしろそうな新刊の紹介が新聞に載っていたので、さっそく買いに・・・

と言いたいところですが、2,700円という価格を見てう~ん、これは図書館だな、と予約して貸本で読みました。

 

著者の岡田恵美子さんは、1932年生まれと書かれていたので今年87歳になるお方です。

60年前、イラン・イラク発掘品の展示会で偶然見たペルシア文字を見て、これが読めるようになりたいという好奇心で国内でしばらく勉強されたのち、4年間のイラン留学をされた人です。

 

まだ日本の大学にペルシア語学科もなく、イランとの間に留学制度もなかった時代です。なんと著者は当時のイラン国王に手紙を書き許可をもらって留学することができたとのこと。

 


 著書の前半は半世紀以上前にペルシア語に魅せられたきっかけや留学生時代のことが語られています。一方、後半は一気に現代に戻ってイラン人の性格や考え方、習慣などについて書かれています。

 

今、政治、外交面で何かと問題を抱えるイランですが、この地域は歴史でも習ったあのメソポタミア文明発祥の地でもあります。

 

イランのようなイスラム圏の美徳は寛容・勇気・雄弁(言葉遣い)の3つと言われているそうです。本のサブタイトルにもある「世界一お喋り上手な人たち」とあるのも3つ目の「雄弁」にかけてあるのです。

 

おしゃべりにも

・人の悪口や人の嫌がることを言わない

・その場にいる誰もが参加できる話題を提供する

・その場にいない人の批判はしない

・聴き手の身になって言葉を選ぶ

などのルールがあるそうです。

 たかがおしゃべりとは言え結構なスキルや気遣いが必要なのですね。

 

古典文学や詩から引用されることわざ、教訓や箴言(しんげん、この本に書いてあったが読めなかった。いましめや格言の意味)も豊富で複数紹介されています。

 

 例えば

「生木は意のままにたわめられる」

「他人の果樹園で客をもてなす」

「風がもたらしたものは風が持ち去る」

「水は水路を戻らず」

これらは日本のことわざで類似するものが想像できます。最初のものは「鉄は熱いうちに打て」ですね。

 

 逆にイスラム特有のものも。

「家に二人の主婦あれば埃は膝まで」 4人まで妻をめとることができるイスラムならでは。

「時には鞍の背に、時には鞍を背に」

「メロンの皮でも侮るな」

解説は本を読んでくださいね。

 

 話は変わりますが、もう10年ほど前にベトナムに行った時のことです。ハノイからハロン湾に行く現地ツアーのバス車内で東京から来た日本人青年と知り合いました。

 

 彼は若い外国人女性といっしょだったのですが、その女性はイラン人で青年が通っている英会話スクールの先生でした。

 

 3人で雑談中、いざイランのことを話題にしようと思っても何も知らず、唯一知っていた「その昔、イスファハンは世界の半分と言われたほど繁栄を誇った」

ということだけでした(イスファハンはその昔イランの首都だったところ)

 そのことを言うと「よくご存知ですね。イランはいいところですよ。ぜひ来てください」と言われたことを憶えています。

 

 さてここからはイランとはまったく関係ない話になるのですが、青年と二人だけで雑談していた時、彼がこのイラン人女性に好意を持っていると私に言ってきたのです。

 いっしょに旅行に来るくらいだからすでに相思相愛かと思ったらそうでもなかったらしい。

 

「彼女が帰国する前に何とかして告白したいのですがどうしたらいいですか?」と相談を受け、おれに聞くか?と思いましたが、「時間がないようならストレートにつきあってください、と言ったらどうかな」と答えました。

 

 帰国後、彼から「僕の英語ではうまく口で言えないので手紙を書くことにしました」というメールが来ました。そうか、ラブレレターにしたか、なかなかやるな、とこの時は思っていました。

 

 そして数日後。来たメールに「だめです、振られました」と書いてあったのです。

状況を電話で聞いてみると「自分が真剣であることを示すため最後にケッパンを押しました」と言ってきました。

 

 「ケッパン?」と聞き直すと「はい、決意が嘘でないことを証明するため、自分の指を切って捺印する血判ですよ。日本の昔からある慣習だと説明しても彼女は激怒して『血がついた手紙を出すなんて気持ち悪い』と言われてしまいました。」と。

 

 これを聞いて絶句… 君は侍か? 今時、日本人同士でもやらないぞ、それもラブレターに。せめて朱肉で拇印にしとけばよかったのに。

強烈な印象だったのでこのエピソードは今でもよく覚えています。

 

話を戻して、著者は本の中で「語学の習得に必要なものは動機、意欲、根気の三つ。齢は関係ない」ということを言っています。

いくつになっても勉強ですね。合わせて文化の違いもよく勉強しましょう。

ばってんT村でした。

 

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