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アホ・バカ分布図2022/07/02

 現在も続いている長寿番組「探偵!ナイトスクープ」、私も毎週観ていましたが、30年ほど前に「アホ・バカ分布図」という企画が放送されました。

 これは、ある大阪生まれのサラリーマンの男性が、東京出身の妻と言い争う際に、自分は「アホ」妻は「バカ」と言いあった経験から、「ふと『東京と大阪の間に「アホ」と「バカ」の境界線があるのでは?』と思い、「東京からどこまでが『バカ』で、どこからが『アホ』なのか調べてください」と番組に依頼してきたことで始まった企画でした。

 当時の番組プロデューサーだった松本修さんは、その後30年の歳月をかけ他の言語にも調査を展開して分布図を作り上げました。

 これが今年出版された「言葉の周圏分布考」という本です。ちょっと紹介しましょう・・・
と言っても、図書館からの借りものですが。ちなみに松本さんは滋賀県出身の方です。











 「アホ・バカ分布図」を作成してわかったのは、アホ・バカと同義の20ほどの方言が京を中心点として同心円を描いて分布しているということだったのです。

 この結果から方言は原則として京都を中心に同心円上に分布したのではないかと考えました。この仮説を証明するため、全国の市町村に方言アンケート用紙を送付し回収結果から分布図を作成していきます。

 さかのぼること昭和の初め、柳田國男が32語の方言で独自に調査を行い、その中の「カタツムリ」の呼び名の方言分布を分析して「方言周圏論」という考えを打ち立てています。
 古語は首都であった奈良・京など近畿を中心にして、段々にいくつかの圏を描くであろう、と論文に表しました。
 松本さんはこの説に忠実に従い、コンパスで同心円を描いていったのでした。

 専門家の研究によれば、マスコミもなかった時代、京から地方へ言葉が「口伝て」で伝わる速度は直線距離で1年間930mとのこと、約1Kmです。東京までは400年、東北・九州の端っこまでたどり着くのに700~800年の言葉の旅となります。

 でも言葉だけが旅をするのではなく、人が移動や移住したらもっと速く伝わるのではないか、と思いますよね?その辺のことも書いてあります。                                                        

 いくつか例を見ていきましょう。

●ありがとう

 オーキニは大きに、ダンダンは段々のことで、ありがとうの頭に付く副詞だったのが、それ単独でお礼の意味に変化したものです。

 ご存じ関西発の「オーキニ」、西日本側に広く伝搬していますが、東北の日本海側、岩手県の太平洋沿岸へも飛んでいます。
 これは江戸時代、大阪から商品を積んで出帆した日本海周りの北前船が「おおきに」も積んで東北地方へ航海し、津軽海峡を抜けて太平洋側へ渡った証しとのこと。

 ダンダンは、主に島根、愛媛で使われています。
島根県が舞台のNHKの朝ドラ「だんだん」、同じくNHKでドラマ化された「坂の上の雲」は愛媛県が主人公たちの出身地、これで聞き覚えがあったのですが、熊本県の一部でも使われていたとはこの地図で初めて知りました。

 愛媛県出身の知人に「”だんだん”って、今でも使われている?」と聞いたところ「今の人は使わないですね。若い人は”だんだん”の意味すら知らないと思う。いなかで地元の人が使っている程度かな」
という答えでした。
 
●けど

「兄はあほやけど、弟はかしこいね」という文例でアンケート調査がされました。
 私の故郷、長崎では「ばってん」と言います。これは地図にも出ているように佐賀、福岡、熊本の西九州側で広く使われます。
 長崎はバカ使用分布圏なので上の例文だと「兄はバカばってん、弟はかしこか」と言いますね。

  バッテン及びバッテは「~ばとて」から来ているそうです。その語源から見ると青森でバッテが使われているのは周圏分布していることの証しのようです。

●いいえ

 また私の地元の事例で恐縮ですが、九州、山口などでは「ウンニャ」「インニャ」と言います。
中部地方や東北地方の一部でも言うんですね。これも地図を見て初めて知りました。

 「ウンニャ」は万葉集の時代からある、いいえを意味する「否(いな)」が変化したものという説があります。 「いな⇒いんな⇒いんにゃ⇒んにゃ⇒うんにゃ」
 語頭の母音は脱落しがちで、「んにゃ」になり、さらに「んま」が馬(うま)となったように「うんにゃ」になったのではないでしょうか。
ということが本には書いてありました。

●たいそう
 程度の大きさを表す副詞ですが、これで思い出したのが「ばさらか」と言う方言、地図にはバサレ(バッサロ 等)と書かれていますが、使われているのは福岡県の筑後地方と大分県の一部のみのレア方言。

 これまた自身の体験ですが、実は母の実家は筑後地方の大川市にあり、私が子供の頃、夏休みや冬休みのたびに行って、いとこたちと遊んでいました。
 そのうちに自然と方言も覚え、たくさんという意味がある「ばさらか」も記憶に残っていたのです。

 数年前、テレビ番組「秘密のケンミンSHOW」で筑後弁のこんな例文が紹介されました。
「こがしこ ばさらか すらごつ ゆうて にやがりよると くらすぞ」

うん、これはわかります。
たぶん、東北、沖縄の方言なみの難解さだと思います。知らないと外国語に聞こえるかもしれません。

単語を対比させて翻訳すると
「これだけ たくさん うそ 言って 調子に乗っていると なぐるぞ」
という意味です。

 話変わって、東日本方面は疎いので知らなかったのですが、東海、関東地方では「ゆで卵」を「うで卵」と言うんですって?
 語頭のYが脱落してこうなった、ゆだる暑さが「うだる暑さ」と言うようになったのと同様と書いてありました。

 「いらっしゃいませ」は、京阪では「お出でやす」「お越しやす」どちらを使うのか、この議論のページもおもしろい。
 越すと越えるの違いに発展し、さすが滋賀県出身の著者、逢坂越、小関越まで話が広がっています。

 ちょっと専門的なところまで深堀されていますが、この本、確かに「たいそう」いやメッチャおもろいです。
ばってんT村でした。

蜂が魚類?2022/07/16

 自分ではけっこうニュースは読んだり観たりするほうだと思います。興味深いニュースや笑える(他人事だからだが)ニュースがけっこうあります。
いくつか紹介しましょう。

●トマレ
 信号のない交差点や見通しの悪い交差点で見かける一時停止を示すため、路上にペイントされた、トマレの表示。

 広島市の住宅地の市道で表示が「トマト」になっているという連絡が住民から役所にあった。白いテープを貼ってレをトに書き直してあった。
急きょ、表示は「止マレ」と漢字交じりに改めたそうだ。

 小学生並みのイタズラです。ネットを見ると、違う場所の写真がいくつも出てきたので、多分おなじようなイタズラが全国各地でやられているのでしょう。



 以下は原文のままです。
担当者は「事故が起きやすいところにこのような標示をしている。本来は一時停止をしてほしいが、誤った解釈をする人がいないとも限らない」と語る。

 これを読んで、車でここを通った人が「トマト」の表示を見てどんなことを思うのだろうかに興味がわきました。

●軽自動車用?
 ガソリンはハイオク、レギュラー、軽油の3種類があるのですが、とあるセルフのガソリンスタンドで軽油の注油ホースの近くに「軽自動車に入れないでください」という意味の貼り紙がしてあったそうです。

 セルフスタンドが普及し始めた数年前から、軽油=軽自動車用のガソリンと誤解して注油する人が増えているそうです。(軽油はディーゼルエンジン専用で、軽自動車でディーゼルエンジン車はない。誤って入れてしまうとエンジンが故障する)

 え~信じられない勘違いだと思ったのですが、セルフスタンドが普及する以前は店員さんが注油してくれていたから何ら知識がなくても間違えることはなかったのですね。

●勘違いと言えば、一度ブログでも書きましたが今でも覚えている落語で聞いたマクラ話。
 友人宅に電話をした男性、幼い子供が電話口に出てきた。そこで
「こんにちは。パパ、いる?」と聞いたら
「パパ?う~ん、いらない」と返ってきた。

携帯、スマホで電話が個人持ちになった現在だと成立しない会話ですな。

●蜂は魚類?
 カリフォルニアの環境団体がミツバチの一種であるマルハナバチの保護を訴えたところ、裁判所がマルハナバチは絶滅の危機に瀕した「魚」であると認め、保護される資格があるという判決を下した、というのが記事の冒頭部分でした。

いったいどうしたら、蜂が魚の一種になるのか? ちょっと長いですが、こんな内容でした。

 ミツバチは年々個体数を減らしており、一部の種は絶滅の危機にひんしています。
カリフォルニアの環境団体は、カリフォルニア州絶滅危惧種保護法(以下、CESA)のもとでマルハナバチを保護対象とするべきと訴えます。

 一方、農業団体はマルハナバチが絶滅危惧種リストに登録されると農薬の使用が困難になるので、これに反対しました。
農業団体は、CESAで保護対象として明示しているのは「鳥、哺乳類、魚、両生類、ハ虫類、植物」のみで、昆虫は保護対象となっていない、ということを指摘したのです。

 CESAの中では「魚」とは何かが定義されていませんが、CESAの上位にあるカリフォルニア州漁業狩猟法では、「『魚』には軟体生物、甲殻類、無脊椎動物が含まれる」と定義されており、裁判ではこの「魚」にマルハナバチが含まれるかどうかが争点となりました。

 2020年、カリフォルニア州のサクラメント郡上位裁判所は、カリフォルニア州漁業狩猟法にある無脊椎動物には水生動物のみが含まれ、マルハナバチの絶滅危惧種リストへの登録は認めないという判決を下しました。

 しかし、環境保護団体はこの判決を不服として控訴。
次のカリフォルニア州控訴裁判所では、判事が「『魚』は水生動物を指すと一般的に理解されているが、法律ではそこまで限定されていない。カリフォルニア州漁業狩猟法の『無脊椎動物』は陸生および水生動物を含むと解釈できる」と述べ、マルハナバチは陸生無脊椎動物であるから絶滅危惧種に指定することができるという判決を下しました。

 農業団体の主任弁護士は「失望しました」とコメントし、さらに上告するかどうかは今回の判決から判断したいと語りました。

 以上が記事の概要です。
生物学上の分類と、法律上での解釈は違う、ということが基になった判断がされたわけですが、読んでいて無理っぽいこじつけがすごくアメリカ的だな、と感心しました。
 
●キラキラネーム
 子供に個性的な名前をつける、いわゆるキラキラネーム。
名前の漢字はどう読んでもかまわないことから行き過ぎた命名が増えてきたため、戸籍法を見直す検討が今年から行われています。

 読みをどこまで許容するかがポイントになっているようですが、漢字と読みの意味が合っていれば許される方向とのことです。

 例えば 騎士(ナイト) 大空(スカイ)などは認められる可能性あり、太郎(じろう)はダメ、という具合。
 さらに認められるであろう例として挙げられていた光宙(ピカチュウ)ですが、実は既に私たちは「光」をピカと言っているのです。

 光一と書いて、ピカイチと読みます。
「彼女の日本語能力は教室の中ではピカイチだ」などと言ったりします。

 多くの中でひときわ優れているという意味ですが、花札から来た言葉とのこと(私、花札は知らないので語源については初耳でした)
ただ、ピカイチなんてもう死語でしょうね、若い人は使わないし、まず知らないでしょう。

 最後に、思わず感動してしまったチクワの包装紙に書かれた注意書き。こう書いてあります。
※原料になる魚は、「えび・かに」を食べています。



 ちょっと笑ってしまいましたが、甲殻類アレルギーの人のことを考えて書かれたのでしょう。ちなみにこの志岐蒲鉾という会社の練り物おいしいんですよ。
ばってんT村でした。

トロッコ問題2022/07/31

  言葉のトピックが続きましたので、今回は少し視点を変えて倫理的あるいは論理的選択問題について書いてみました。

 イギリスの倫理学者が提示した思考実験に「トロッコ問題」というのがあります。ご存じの方もいらっしゃるでしょう。

 図のように石を満載したロッコが暴走していて、その先に5人の作業員がいます。5人はトロッコに気づかず、このままだと5人ともトロッコに轢かれて死んでしまいます。


 たまたま現場にいたあなたはこの暴走トロッコに気づきます。近くに線路の切り替えスイッチがあり、線路を切り替えてトロッコの進路を変えることができます。
しかしその先にも1人の作業員がいて、トロッコの進路を切り替えると今度はこの作業員が死んでしまいます。

 作業員はトロッコに気づかない、トロッコを止める手段はなく、大声をあげても作業員には聞こえない。あなたができることは線路を切り替えることだけ、という前提です。

 あなたはスイッチを切り替えますか、それともそのまま何もしないですか?という問題です。

 複数の統計データによると、85%以上の人が「スイッチを切り替えて1人を犠牲にし5人を助ける」でした。多数派の考えは、5人を救うために1人を犠牲にするのは許される、というものです。

  一方、切り替えないという少数派の考えは、元々5人は事故に遭う運命だった、無関係の1人を巻き込むのは間違っている、人の運命を変える操作を自分がすることに抵抗を感じる、というものです。

 この思考実験にはどちらが正解ということはありません。私だったら迷っているうちにトロッコが切り替えポイントを通過してしまった、となりそうです(結果的に5人が犠牲になる)
 まず、それ以前に、こんな場面には遭遇したくないですよね。

  でも、実際にこのような選択を強いられる人たちが世の中にはいます。医療従事者です。
一昨年のコロナ感染で重症者が大勢出た時期のニュースで、トリアージという言葉を聞くことがありました。トリアージ(triage)とは、患者の重症度に基づいて治療の優先度をつける、という意味です。

 人工呼吸器ECMO(エクモ)残り1台の前に、高齢の重症者と若者の重症者が同時に運ばれてきた。どちらに人口呼吸器をつけるか、という選択を迫られた、というケースもあったそうです。
  
 さて、重い話題はここまでにして、次はオモロイ問題に変えましょう。アメリカの人気テレビ番組の中で行われていた、とある駆け引きのゲームです。

 A,B,C3つのドアがあります。1つのドアの裏には賞品である高級車が隠れています。そのドアを当てたら車がもらえます。あとの2つのドアはハズレです。

 ゲームの進行ははこうです。
 まず、あなたは1つのドアを選びます。Aを選んだとしましょう。
次に司会者モンティが番組をおもしろくする演出としてCのドアを開けます。モンティはどのドアに車があるかは事前に知っています。当然、開けるのはハズレのドアです。

 イラストのハズレドアにヤギがいるのは、これも演出で実際にそうされていたようです。しかしヤギが鳴いたり物音をさせたりしたらハズレがわかってしまいそう・・・

 この時点で、車はAかBのどちらかのドアにあることがわかりました。そして彼はこう言います「Aでいいですか?今ならBに変えてもいいですよ」
さあ、あなたなら選択したドアを変えますか?という問題です。


番組では最初の選択を変えない人が多かったのです。
「司会者に言われて選択を変えてはずれたら悔しい」
「自分の直感を信じる」
「当たる確率は2つに1つでどちらを選んでも同じでしょう」
と言うのが理由だったそうです。

 確かに選択を変えても変えなくても同じじゃないの、と私も思いました。

 この問題を会社で後輩に話したことがあったのですが、すると彼は「これ、小学生の息子が学校で出されて、家に持ち帰ってきて俺に話した問題ですよ」と言ったのです。
 
  この問題の解答、結論から言いますと、「選択を変えた方がよい」になります。当たる確率が2倍になります。
 選択を変えなければ、3つあるドアからひとつを選ぶのだから当たる確率は1/3ですが、ハズレのドアをあけてもらって選択を変えると確率は2/3になるのです。

そんなことあるわけがない、と最初は思いました。

 確率の数値ウンヌンは置いといて、直感的にわかりやすいのはこの説明です。
ドアが100個あります。あなたはその中から1つ選びます。
司会者が98個ハズレのドアを開けます。
残ったのは2つのドア、司会者は「今なら選択を変えてもいいですよ」と言います。

 絶対変えますよね? (いやいや、私は100本のくじの中から1本を引き当てる霊感を持っているから最初の選択は変えない、という人は別ですが)

A,B,Cの3つのドアに話を戻してちょっと確率の話に。

Aのドアに当たりがあるとき、司会者がどう言おうが選択を変えないと
A当たりの時、Aを選ぶ⇒〇当たり
A当たりの時、Bを選ぶ⇒×ハズレ
A当たりの時、Cを選ぶ⇒×ハズレ
当然、当たる確率1/3です。

今度は選択を変えた場合、
A当たりの時、Aを選ぶ⇒司会者がB(orC)を開ける⇒C(orB)に変える⇒×ハズレ
A当たりの時、Bを選ぶ⇒司会者がCを開ける⇒Aに変える⇒〇当たり
A当たりの時、Cを選ぶ⇒司会者がBを開ける⇒Aに変える⇒〇当たり
当たる確率が2/3にアップしました。

 Bが当たりの時、Cが当たりの時も同様になります。このように発出するパターンを網羅してみるとなるほど確かに、と思います。

 この問題は番組司会者だったモンティ・ホールの名前を取って「モンティ・ホール問題」と言われています。興味のある方はネットで検索してみてください。さまざまな解説がされています。

 さて自分が日常生活で遭遇するのは「スーパーのレジ、どこに並ぶか問題」くらいでしょうか。行列の人数だけでなく各人のかごの中の量も見て、レジを選択します。はずすとくやしいですが、行列が一つのセルフレジをもっぱら利用するようになって解決です。
ばってんT村でした。

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