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トロッコ問題 ― 2022/07/31
言葉のトピックが続きましたので、今回は少し視点を変えて倫理的あるいは論理的選択問題について書いてみました。
イギリスの倫理学者が提示した思考実験に「トロッコ問題」というのがあります。ご存じの方もいらっしゃるでしょう。
図のように石を満載したロッコが暴走していて、その先に5人の作業員がいます。5人はトロッコに気づかず、このままだと5人ともトロッコに轢かれて死んでしまいます。
たまたま現場にいたあなたはこの暴走トロッコに気づきます。近くに線路の切り替えスイッチがあり、線路を切り替えてトロッコの進路を変えることができます。
しかしその先にも1人の作業員がいて、トロッコの進路を切り替えると今度はこの作業員が死んでしまいます。
作業員はトロッコに気づかない、トロッコを止める手段はなく、大声をあげても作業員には聞こえない。あなたができることは線路を切り替えることだけ、という前提です。
あなたはスイッチを切り替えますか、それともそのまま何もしないですか?という問題です。
複数の統計データによると、85%以上の人が「スイッチを切り替えて1人を犠牲にし5人を助ける」でした。多数派の考えは、5人を救うために1人を犠牲にするのは許される、というものです。
一方、切り替えないという少数派の考えは、元々5人は事故に遭う運命だった、無関係の1人を巻き込むのは間違っている、人の運命を変える操作を自分がすることに抵抗を感じる、というものです。
この思考実験にはどちらが正解ということはありません。私だったら迷っているうちにトロッコが切り替えポイントを通過してしまった、となりそうです(結果的に5人が犠牲になる)
まず、それ以前に、こんな場面には遭遇したくないですよね。
でも、実際にこのような選択を強いられる人たちが世の中にはいます。医療従事者です。
一昨年のコロナ感染で重症者が大勢出た時期のニュースで、トリアージという言葉を聞くことがありました。トリアージ(triage)とは、患者の重症度に基づいて治療の優先度をつける、という意味です。
人工呼吸器ECMO(エクモ)残り1台の前に、高齢の重症者と若者の重症者が同時に運ばれてきた。どちらに人口呼吸器をつけるか、という選択を迫られた、というケースもあったそうです。
さて、重い話題はここまでにして、次はオモロイ問題に変えましょう。アメリカの人気テレビ番組の中で行われていた、とある駆け引きのゲームです。
A,B,C3つのドアがあります。1つのドアの裏には賞品である高級車が隠れています。そのドアを当てたら車がもらえます。あとの2つのドアはハズレです。
ゲームの進行ははこうです。
まず、あなたは1つのドアを選びます。Aを選んだとしましょう。
次に司会者モンティが番組をおもしろくする演出としてCのドアを開けます。モンティはどのドアに車があるかは事前に知っています。当然、開けるのはハズレのドアです。
イラストのハズレドアにヤギがいるのは、これも演出で実際にそうされていたようです。しかしヤギが鳴いたり物音をさせたりしたらハズレがわかってしまいそう・・・
この時点で、車はAかBのどちらかのドアにあることがわかりました。そして彼はこう言います「Aでいいですか?今ならBに変えてもいいですよ」
さあ、あなたなら選択したドアを変えますか?という問題です。
番組では最初の選択を変えない人が多かったのです。
「司会者に言われて選択を変えてはずれたら悔しい」
「自分の直感を信じる」
「当たる確率は2つに1つでどちらを選んでも同じでしょう」
と言うのが理由だったそうです。
確かに選択を変えても変えなくても同じじゃないの、と私も思いました。
この問題を会社で後輩に話したことがあったのですが、すると彼は「これ、小学生の息子が学校で出されて、家に持ち帰ってきて俺に話した問題ですよ」と言ったのです。
この問題の解答、結論から言いますと、「選択を変えた方がよい」になります。当たる確率が2倍になります。
選択を変えなければ、3つあるドアからひとつを選ぶのだから当たる確率は1/3ですが、ハズレのドアをあけてもらって選択を変えると確率は2/3になるのです。
そんなことあるわけがない、と最初は思いました。
確率の数値ウンヌンは置いといて、直感的にわかりやすいのはこの説明です。
ドアが100個あります。あなたはその中から1つ選びます。
司会者が98個ハズレのドアを開けます。
残ったのは2つのドア、司会者は「今なら選択を変えてもいいですよ」と言います。
絶対変えますよね? (いやいや、私は100本のくじの中から1本を引き当てる霊感を持っているから最初の選択は変えない、という人は別ですが)
A,B,Cの3つのドアに話を戻してちょっと確率の話に。
Aのドアに当たりがあるとき、司会者がどう言おうが選択を変えないと
A当たりの時、Aを選ぶ⇒〇当たり
A当たりの時、Bを選ぶ⇒×ハズレ
A当たりの時、Cを選ぶ⇒×ハズレ
当然、当たる確率1/3です。
今度は選択を変えた場合、
A当たりの時、Aを選ぶ⇒司会者がB(orC)を開ける⇒C(orB)に変える⇒×ハズレ
A当たりの時、Bを選ぶ⇒司会者がCを開ける⇒Aに変える⇒〇当たり
A当たりの時、Cを選ぶ⇒司会者がBを開ける⇒Aに変える⇒〇当たり
当たる確率が2/3にアップしました。
Bが当たりの時、Cが当たりの時も同様になります。このように発出するパターンを網羅してみるとなるほど確かに、と思います。
この問題は番組司会者だったモンティ・ホールの名前を取って「モンティ・ホール問題」と言われています。興味のある方はネットで検索してみてください。さまざまな解説がされています。
さて自分が日常生活で遭遇するのは「スーパーのレジ、どこに並ぶか問題」くらいでしょうか。行列の人数だけでなく各人のかごの中の量も見て、レジを選択します。はずすとくやしいですが、行列が一つのセルフレジをもっぱら利用するようになって解決です。
ばってんT村でした。
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