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あいまいな日本語 ― 2024/07/05
最近、と言っても去年のことですが大いに笑った内容で、今も記憶に残っているものがあります。以下、X(旧Twiter)から原文をそのまま抜粋します。
#イオンシネマ岡崎 にて
2/17(金)~2/22(水)
炊いた肉
レイトショーは最・大・スクリーンをご用意しておりますよ!!
2/17、2/20-2/22【20:35】
2/18-19【20:10】
お待ちしております!
【お詫びと訂正】
こちらのツイートにて
映画「タイタニック」の事を「炊いた肉」と誤変換してしまいました。
お詫びして訂正いたします。当館では炊いたお肉はご用意しておりません。
タイタニックを上映しております。
以上、原文抜粋
発信する前に確認すれば気づきそうなものですが、誰もがやりがちなパソコン上の誤変換です。もちろん笑いを取るための故意ではないでしょうが、日本語はけっこう言葉遊びができる言語ではないかと思います。
ダジャレなどが最たる例で、格言やことわざをもじったもので最近面白かったのが
「行列を見たら並ぼうと思え」、
元の格言は容易に想像がつきますよね。
これはずいぶん昔にさかのぼるのですが、嘉門達夫の替え歌メドレーという歌がありました。歌謡曲やコマーシャルソングのイントロ部分だけを替え歌で次々歌っていくというもので今でもYouTubeで見られます。
たくさんある中でインパクトが強く、憶えているのが
「キャ~ラメルひろたら(拾たら)箱だけ~」
北島三郎のヒット曲「函館の女」のイントロ部分「は~るばる来たぜ 函館へ~」の替え歌なのですが、元歌を知っていないと笑えませんね。
何々とかけて何々と説く。その心は、という「謎かけ」になると聞く方もちょっと想像力が必要になってきます。
謎かけは書かれたものを読む機会より、落語やお笑い番組などで聴くことの方が多いので、頭の中で同音異義の単語を連想しなければなりません。
謎かけの名人である某お笑いタレントが落語で聴いて最も印象的だったと言うのが以下です。耳で聴いたままを書くとこうなります。
「ちょうかん とかけて おぼうさん ととく。そのこころは けさ きて きょう よみます」
漢字まじりで書くと
「朝刊とかけてお坊さんととく。その心は、今朝来て(袈裟着て)今日(経)読みます」
こんなの創る人、天才的だと感心します。
さて、お笑いならよいのですが、時に日本語のあいまいさは誤解を招いたりします。
こんな本が発刊されたのを知って読んでみました。





以前読んだ同じ著者(川添愛、言語学が専門の方)の「言語学バーリ・トゥード」というタイトルの本がおもしろかったのです。
松任谷由実の「恋人がサンタクロース」を引き合いに「は/が」の違いの解説を興味深く読みました。(2022年の3月のブログで紹介しています)
この「世にもあいまいなことばの秘密」では、漢字かな混じりの使い方、単語の区切り、句点の有無、漢字の読みの多様性などを題材に多くの文例を用いて解説されています。
いくつか抜粋すると
・変換ミスしそうな「おしょくじけん」 汚職事件とお食事券
・人気(にんき、ひとけ)がない 意味が全く違ってきます。
・助動詞「れる、られる」
部長が部下をのせて駐車スペースを見つけながら運転していたところ、部下から「部長、あそこに止められますか?」と言った。
すると部長は「私の運転技術を疑うのか?」と返された。
部下は尊敬の意味で言ったのに、部長は「できるのか?」と可能の意味と解釈したための誤解。
上記などは実生活で遭遇しそうな場面です。
・「~ではありませんか?」にどう答える
本書では「二十歳未満ではありませんか?」という例文が出てきます。
口頭であれば、実年齢を言ってわかってもらえますが、文書で「はい、いいえ」の2択になっている場合、大いに迷うと思います。
英語だと否定疑問文だろうが、通常の疑問文と同じ回答をすればよい、と学校で習いました。Aren’t you a teacher?と聞かれて、先生ならYes、違っていたらNo、実にシンプルなのですが。
実際、アンケートや健康診断の問診票で時々、このような否定疑問文を見かけます。
「これまでタバコを吸ったことはないですか?」と聞かれると迷ってしまいます。
混乱させないようできるだけ否定疑問文は使わない方がいいですね。
本書の内容とは外れますが、自分の体験から誤解を招きやすい表現として
・12時制か24時制か
例えば、13時集合を午後3時と勘違いされてしまう。
プライベートだと、両方の表現を目にするので注意して読むしかないですね。
ただ業務では、特に24時間稼働しているような職場だと24時制表現がルールになっているところもあります。
・日付けや曜日の相対的表現
「明日」というような表現のことです。
すぐに読むとは限らないメールで「明日」という書き方をされると、読むのが翌日以降だったら間違う可能性があります。
ましてや「明後日」というような表現は実用文では書かない方が無難でしょう。
これは、日付を書くのが間違いを防ぐ一番の方法です。
それとこれも時々やってしまいますが、日付と曜日を併記して、間違った曜日を書いてしまう。日付が正しい場合がほとんどですが、発信者に再確認しないといけないので手間です。
来週の日曜日という表現も誤解を招きます。週の初めを月曜とするか、日曜とするかで解釈が違ってくるからです。
これら日本語のあいまいさはけっして悪いものではない、日本語特有の美点もあるのだということを著者は最後に述べられています。
さて、もう一冊読んだのが、阿川佐和子さんの「話す力」。
以前「聞く力」という著書を出されましたが、その続編とでも言えるでしょうか(前書きに、二匹目のドジョウではないですが、と書かれている)

この中に「一人で入った飲食店で何を喋る」という章が阿川さんの実体験と共に書かれています。
若いころは1人で外食するのが苦手だった、そこでお店の中で目についたもの、メニューや料理について聞いたりしはじめたとのこと。
私もけっこう一人で飲食店へ入ることがあります。今はスマホをいじっていれば一人でも手持無沙汰にはなりませんが、それでは味気ない。
せっかくなので、邪魔しない範囲でお店の人と話したりします。
お昼はピーク時を外して行けばお店の人もちょっと余裕が出てきて相手をしてくれます。
料理の材料が分からないとき「赤いこれ、何ですか?」と聞くと「それビーツなんですよ」と返ってきて会話のきっかけになったり、壁に飾ってあるサインは誰なのか聞いたら「実は近所の出身なんですよ」と返ってきたり、と。
描かれている数々のエピソードが面白い一冊です。
最後に、つい最近、印象に残ったのがネット記事で見た「英国にお帰りなさい」という言葉。
これは天皇、皇后が6月の英国訪問時、チャールズ国王夫妻主催の晩さん会で国王が日本語で発したスピーチです。
「お帰りなさい」と語頭に「お」を付けると迎える時、送る時どちらでも使えますが意味は正反対、「英国にお帰りなさい」だけを単独で読むと一瞬どちらかわかりません。
前後の文脈、内容を読めばもちろんこの場合は歓迎の意味だとわかるのですが、こんなことからも日本語のあいまいさというか多様性が見られる実例でした。
ちなみに、いつも読んでいる某新聞には
チャールズ国王は「英国に『お帰りなさい』」とスピーチを切り出し・・・
とこの部分が『』付きで書かれていました。
多分このあいまいさが分かっていて、できるだけわかりやすいよう記者が『』を付けたのかな、と思わせるものでした。
ばってんT村でした。
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