★オリーブホームページはこちらからどうぞ!

日本語が消滅する2023/08/23

 ある落語家さんの話ですが、その方は落語を知ってもらうため、大阪の小・中学校で時々出前授業をやっています。
 当然、落語を披露するのですが、最後の質疑応答タイムで「オマハンってなに人ですか?」と生徒から訊かれたと言います。
 もちろん、古典落語に出てくる人間はどこかの国の「オマハン」ではなく「おまはん」、 「おまえさん」が音変化した二人称の人代名詞のことです。

「おまはん」は大阪、京都など関西、あるいは四国の一部で話される「あなた」の意味ですが、昔、私も滋賀でも言われているのを聞いたことがあります。
 年配者でまだ使う人もいると思いますが、もう死語の類で若い人にはわからない単語なのでしょうね。

 このように存在はするけど日常で使われなくなる死語はまだしも、ほんとうに消滅するとなるとただごとではありません。
こんな本を読みました。




 さて、世界中に言語はいくつくらいあるでしょうか?
国の数としては約200ヶ国と言われています。英語やスペイン語を母国語にしている国が複数ある一方でインドや中国みたいにいくつもの民族言語がある国もあるので、多くても1,000言語くらいかなと思っていたのですが・・・

 この本によると、なんと世界には6,000~7,000言語あるらしい。アメリカのSILインターナショナルという団体が登録している言語の数なのですが、かなり細かい方言までも一言語にカウントしているのでこのような膨大な数字になっているようです。

 日本語を例にみると、なんと12言語あることになっています。なんとなく、沖縄など南方の言語は別だろうな、とは思っていましたが、内訳は
日本語、北奄美語、南奄美語、喜界語、徳之島語、国頭語、沖永良部語、中央沖縄語、与論語、宮古語、八重山語、与那国語の12言語。
 アイヌ語がないなと思いましたが、ユネスコの分類によれば、アイヌ語も含まれています。分類する機関によっても定義が違うようです。

 専門家が分類したことなのでなんとも言えませんが、いやいや分けすぎだろう、って印象を持ちました。

 一方、ユネスコの調査によれば、「少数者言語」と言って話者が10人以下の言語が世界には199もあるらしいのです。もうこれらは消滅危機言語ですが、日本語でも先ほど出た複数の琉球言語やアイヌ語も消滅危機言語に挙げられています。

 著者によると、言語が消滅する原因は次の5つがあるそうです。
1.自然災害や大量虐殺、疾病などによって話者が全滅してしまった場合
2.同化政策が実施された時
3.自発的に他言語に乗り換えた時
4.征服者が被征服者の言語に同化した時
5.別の言語を派生させ、役割を終えた時

2.は征服した国が自分たちの言語を強制化するという流れで起きたことはわかるのですが、4.はその逆の現象です。そんなことがあるのか、という感じですよね。

 過去の具体例では清を建国した満州族。漢民族に満州語を強制せず、満州語を話すのは優秀な漢民族に限るという政策をとったのです。そのため満州語は広まらず逆転現象が起きたというわけです。
 ヨーロッパでは5世紀から10世紀にかけてのフランク王国、現在のドイツ、イタリア、フランスあたりを征服したのですが、フランス文化のレベルの高さ、フランス語話者の多さにフランク語からフランス語に乗り換えた、ということです。

 著者の考えでは、将来、日本語が消滅する可能性があるのは原因1.2.ではないかと言います。
1.の話者が絶滅するというもの。確かに少子化によって日本の人口は減り続け、移民が大量に移住してきたら日本語は先細りしてきます。

2.にしても昨今だと戦争が勃発、あるいは巻き込まれる可能性はおおいにあります。過去には第二次大戦で敗戦国となった日本ですが、アメリカによって英語を国語として強制化される可能性もあったのです。

 でも著者が最も懸念しているのが、3.自発的に他言語に乗り換える時、と言っています。明治初期、実際に国際共通語である英語に乗り換えようという議論が政治家の間でなされましたが、猛反対にあって頓挫した経緯があります。
 ずっと下って、2000年には政府が英語を第二公用語にしようという提案、議論がされたことがあります。

 過去の海外の事例から、バイリンガルになると世界共通語で優勢な英語が地域言語である日本語を駆逐する可能性は十分ある、と著者は述べています。
 英語の早期教育はその入口に当たるものなのでしょう。

 さらに読んでいて思ったのですが、文字の大切さです。歴史上、文字を持たない、いわゆる話し言葉だけの言語は話者が減るとあっという間に消滅してしまいます。
 口頭以外に伝承する手段がないため、言葉だけでなく歴史や文化なども記録に残らずまさしく民族の消滅になります。

 話はちょっとそれますが、最近久しぶりに映画館に洋画を観にいきました。前日、事前にネットでチケットを購入しようと時間帯を見ると、1日4回上映のうち、2回は吹き替え版、2回は字幕版だったのです。
 それも字幕版は朝一番9時ごろと最終4回目の午後7時ごろからと隅っこに追いやられているのでした。
一日3回上映の別の映画だと、字幕版が1回だけというのも見かけました。

 いつから吹き替え中心になってしまったんだ、と嘆きつつ朝一の字幕版のチケットを購入しました。老若問わずでしょうが、今の日本人はもう文字を読むのを面倒くさく思うようになってきているのでしょうか。
 本と違い、映画の字幕は観客が読み終わるのを待ってくれるわけではないのでなおさらですね。
 漢字は書けなくなっても、せめて日本語を読もうよ、と言いたいです。

 でも一方で読書好きも健在のようです。
 本書は出版を広告で知って即、図書館にリクエストして買ってもらったので私が1番目だったのですが、今年の直木賞、芥川賞の受賞作は図書館の貼り紙を見るとすでに予約が40~50人待ちになっていました。
 貸出期間は最大3週間、図書館も同じ本を3冊ほど購入するはずですが、予約の最後の方が借りれるのは多分1年後になってしまうでしょう。

 最近は新刊の小説も軽く2,000円超えるので映画1本分より高価です。財布を開けば手元に書籍は残る、と言う利点はありますが。
ばってんT村でした。

★コメント・トラックバックは内容確認後公開しております
★オリーブホームページはこちらからどうぞ!