異国を感じる国 ― 2019/01/06
自国から離れるほど外国ではなく異国と言う表現が似合う感じがします。離れると言っても距離的に近い・遠いではなく、食習慣、生活習慣、文化、宗教などの違いの距離感のことです。
私には、エジプトやトルコ、モロッコなどイスラム国家がそれに相当します。また見どころも多いので行ってみたい国々でもありました。
近年は治安を考えると観光で行くにも躊躇するような地域ですが、昨今のような物騒な情勢になる前だったので、今振り返ると行ける時に行っておいてよかった、と思っています。
10年ほど前、正月休みの連休を利用して行ってきたエジプトでのことを書いてみたいと思います。2011年のエジプト革命以前の平穏な時期です。
カイロに滞在していたのですが、毎朝まず聞こえるのが各モスクから町中に響くアザーン、これで目が覚めます。季節によって時間は少しずつ違ってくるらしいですが、最初のアザーンは早朝5~6時の間で流れていると思います。
アザーンはイスラム教徒に礼拝の時間を告げる呼びかけで、朗々とした節が音楽のように聞こえます。これを聞くとほんとうに異国に来たな~、と思わせます。
食に関しては、エジプトの国民食と言われているコシャリをまず試してみました。コシャリとは、米、マカロニ、短く切ったパスタ、レンズ豆やひよこ豆を混ぜてトマトソースをかけたもので、一種のファストフードです。
この写真、トマトソースをかけて混ぜたあと。色彩的に写真映えする料理ではないですね。
マカロニ、パスタが入っていることからイタリアの影響があるようです。味はトマトソース味なので違和感なく最初はおいしいのですが、量が多いので正直言って、同じ味が続いて後半は食べ飽きてしまいます。でも日本円で100~200円程度なのでとにかく安い。
結局、おいしくて毎日食べたのがケバブサンド。あのクルクルと回転させてあぶり焼きにした羊肉をパンに挟んだものです。
さて、交通機関では、こんなことが…、と思った経験をしました。
カイロには地下鉄が走っていて、観光地へ行くのに滞在中何度も利用しました。ある日、ホテル直近の地下鉄駅から乗ったときのことです。
私が乗った車両は女性が多くて混雑していました。空席もなく立っていましたが、周囲からジロジロと見られていることに気づき「アジア人がそんなに珍しいのかな?」などと考えていました。
しばらくすると、一人の女性が寄ってきてトントンと私の肩をたたいて何か言ってきました。現地語なので何を言っているのかもちろんわかりません。
わからない、という素振りをすると、その女性はいったん私のそばを離れて、今度は別の女性を連れてきました。
そして、連れてこられた女性が英語でこう言ったのです、「ここは女性専用車両ですよ」
そんなものがエジプトにもあったの?確かに車両内をよく見ると男性は私一人でした。乗車した時には数人男性がいたのですが、彼らは途中で気づいたのかまったくいなくなっていました。
「申しわけありません、知りませんでした。」と謝って、次の駅で一旦降りて別の車両に移りました。 あの視線は警戒の眼差しだったんですね…冷や汗。
あとでガイドブックを見てみると、確かに女性専用車両がある、と書いてありました。
さて別の日、ズラッとみやげ物屋が並ぶハーンハリーリという大バザールへ行った時のこと。ここは世界中の旅行者が必ず立ち寄る観光名所でもあります。
ここにちょっとした広場があり、歩いている観光客相手に靴磨きの男たちが声をかけてきます。
私にも、若い靴磨きが英語で声をかけてきました。
「10ポンドで靴磨きするよ」(エジプトポンド、正確な料金は忘れたので仮に10としときます)という誘いに、歩き疲れたので休憩も兼ねてちょうどいいかと思い頼みました。
さて靴磨きも終わり、いざ料金を払う段になった時、「片方10ポンドだから両方で20ポンドだ」と言ってきたのです。
典型的なセコいやり方です。金額は小さいですが、カチンと来たので「いや、10ポンドしか払わない」と言って拒否しました。
相手も「払わないと警察を呼ぶぞ」と一歩も引かず、押し問答をしばらくしていると、他の靴磨きの職人3~4人が何事かと、我々のところにワラワラと集まってきました。
それを見て「エッ、仲間が集まってきた。これまずいんじゃないか」と思いはじめたのです。私と揉めている靴磨きは集まってきた仲間に現地語で事情を説明しています。
「この日本人、料金を払わないんだよ。」とでも言っているのでしょう。
案の定、説明を聞いた男たちは私の方を見て手振りを交えて現地語で何か言ってきました。口調からして「お前は払うべきだ」とでも言っているのは明らかです。
多勢に無勢の状態、でも大勢の観光客が行きかうような広場なので強引なことはしないだろうと高を括り、いざとなったら10ポンド紙幣を放り投げてダッシュでその場を逃げよう、と決めたのです。
そんなことを頭の中で思い巡らせていると、さらにもう一人、中年の靴磨きの男性が新たに現れたのです。
加勢がまた増えたぞ~と思っていると、事情を聞いたその中年男性は、私の相手になっている若い靴磨きに向かって何か言い、再度私にも聞こえるように英語で「〇×(男の名前)、おまえが悪い。謝りなさい。」と言ったのです。
これは想定外でした。彼がその場をとりなしてくれたのです。
その中年男性の靴磨きは騒ぎが一段落した後、「若い者があのようなことをして申しわけなかった。許してやってくれ」と自らも謝ってくれたのです。
それから、日本人と話をするのは初めて、という彼としばらく路上に座り込んで日本語やアラビア語を教え合ったりしてひとしきり会話をしたのでした。
英語はどこで憶えたのか聞くと「ここ、On the road。靴を磨いている間、観光客相手に会話をして憶えたよ。イタリア語、スペイン語、フランス語も少し話せる」
書く方はどうやって憶えたのか聞くと、「聞いた単語を家で辞書を引いて憶えるようにしている」と彼。それから「息子には、俺のようにならないように勉強しろ、といつも言っているんだ」と笑いながら付け加えていました。
どこの国の親も同じです。
さて、最後は帰国日のことです。
カイロ市内は渋滞がひどいということを聞いていたので、かなり早めに空港行きのバスに乗りました。確かにカイロ市内の所どころで渋滞に遭遇したのですが、あるところでバスがエンジンも切られ完全に止まったのです。
そのすぐ後、運転手がバスを降りていきました。何の説明もなく唐突にです。他の乗客を見回すと、数名がその後を追って同じくバスを降りたのです。
えっ、何事が起きたの?
運転手の行き先を見てやっと事情が分かりました。アザーンも聞こえます。礼拝の時間だったのです。
所かまわずと言うと失礼になるかもしれませんが、礼拝ができる状況であれば必ずお祈りするんだ、と再認識しました。
このようにハプニングがいくつもあったエジプトですが、地下鉄のような以外な共通点もありつつ異国を感じる一国でした。
今年もよろしくお願いします。
ばってんT村でした。
それ、詐欺かも ― 2019/01/20
日本ほど治安のいい国はないと言われます。日本で、落としたさいふが中身も抜かれずそのまま戻ってきて驚く外国人観光客の話も聞きます。
電車内で網棚に荷物を置いて居眠りできる国は日本以外まずないでしょう。手にしたスマホすら奪い取られる国もあるのですから。
さて、私の体験で言いますと、確かに海外へ行くと日本では考えられない詐欺まがいのことに遭遇したことが何度かありました。
前回、エジプトの靴磨きの料金請求のセコいやり口は書きましたが、その他にも国別に体験談を書いてみました。
・インド(ニューデリー)
もう20数年前の事ですが、初めてインドに出張で行った時のこと。ニューデリーの空港に到着後、さっそく両替をしました。まだ紙幣カウンターなどが導入されていない時代です。
窓口でいくつもの束になったルピー紙幣が目の前にドサッと置かれました。他の人はほとんど確認もせず、両替が終わったらさっさと窓口を離れ出口へ向かっていきます。
私は窓口の職員の目の前で紙幣を1枚1枚めくって確認をしたのです。時間をかけもう数え終わろうとする間際に、スーッともう一つルピー紙幣の束を職員が私の目の前に出してきました。
最初からいくらか抜いていたのです。私がニヤッとすると、相手もばれたか、というような苦笑いを浮かべていました。追加で出てきた札束も含めて合計するとピッタリ両替額でした。
この時は、まさか国際空港の銀行の両替でこんな目に合うとは信じられない思いでした。今は紙幣カウンターが使われているのでごまかしやカウントミスはないはずですが、私はこの時のことが深く印象に残っていて両替後に確認する習慣は未だに抜けていません。
・タイ(バンコク)
バンコクにはトゥクトゥクと言われる、荷台部分を客席にした3輪タクシーがバリバリと甲高いエンジン音を響かせてたくさん走っています。小型で小回りがきくので渋滞の時には普通のタクシーより早く移動できます。
ただ、料金メーターが付いていないので行先を言って運賃は交渉になるのです。
ある夕方の食事時、トゥクトゥクを拾って、何度も行ったことのあるタイ料理レストランの名を告げました。すると運転手が
「今日、その近くでお祭りをやっていて道路は通れない。店も休みだよ。代わりに友達がやっている近くのタイ料理屋に連れて行ってあげよう。運賃は要らない」
と言うのです。
マージン目当ての典型的な客引きパターンです。行っていたら多分高い食事になっていたでしょう。
これを断って、他のトゥクトゥクで目的の店に行ったら当然ながらレストランは普通にやっていました。
・イタリア(ミラノ)
出張で行ったミラノでのこと。休日に同僚と2人で賑やかな市街を歩いていると前方から4~5人の子供が小走りにやってきて我々を物珍しそうに見ながら囲みはじめました。
そして何か英語、イタリア語まじりで話しかけてきて、さらに我々に触ろうとして手を出してきたのです。
この時点で瞬時にこれはヤバイ、とピンと来て同僚に「逃げろ」といって2人でその場を走って離れました。
ヨーロッパで昔よくあるパターンで、集団でやってきて一人が話しかけたり触ってきたりして観光客の注意を引きます。そのすきに他の仲間が後ろから持ち物をすったり抜いたりするやり口です。子供と思って油断してはいけません。
・フィリピン(マニラ)
これも10年以上前の話です。
マニラの海岸沿いにあるロハス通りという広い遊歩道を散策していた時のこと。一人の身なりのいい男性が「日本人ですか?」と英語で話しかけてきました。
日本のどこから来たか、フィリピンは初めてか?など世間話をしてしばらくすると「実は私はCitibankに勤めている者です」と言って、Citibankの名刺を出してきました。
そして続けて
「日本人と話をしたいという、日本に非常に興味のある銀行の友人がいるのです。謝礼はしますので話し相手をしてもらえないでしょうか?これはいい機会だと思います。そこに車も待たせてあります。」
と言って少し先の方を指さします。そこには確かに車が止まっていました。
世界規模のCitibankの社員が平日の昼間に、こんな所をうろうろしているなんてありえないでしょう。
車に乗ったら最後、どこへ連れていかれるかわかりません。
私は「今から友人と会う約束があるので残念だけど行けません。」とていねいにお断りしました。
この時はやっぱりマニラは治安が悪いのだと肌で感じて、以後通りで話しかけてくるフィリピン人は一切相手にしませんでした。
翌日、日本人戦没者の墓地があるモンテンルパへ行こうと思い、現地旅行会社に行って行き方を尋ねたら、「流しのタクシーはやめた方がいいですよ。うちみたいな旅行会社の車をチャーターして行った方が絶対安全です。」と言われたのです。
で、車1台貸切って行ってもらったのはよかったのですが、モンテンルパからマニラへの帰り、走行中に車のボンネット付近から白煙がモクモクと出てきました。エンジンのオーバーヒートだったのです。
別の意味で安全上、少しヒヤッとしましたが休み休みしながら無事に帰りつけました。
・スロベニア(リュブリャナ)
出張で滞在したスロベニアの首都、リュブリャナ。休日にリュブリャナ鉄道駅付近を散策していたとき、一人の中年男性に英語で声をかけられました。
「今日、電車でリュブリャナまで出てきたけれど、こっちで財布を盗まれてしまいました。帰りの電車賃もないのです。電車賃程度でいいので貸してもらえないでしょうか?」
という寸借詐欺。
最近はもうこのような子供だましの手口はないかもしれません。でも、哀れさが際立つ演技力は抜群で当時は一瞬信じかけました。
・イタリア(ナポリ)
再びイタリアですが、これは私自身の体験ではなく目撃談です。
イタリア国内でもナポリは治安が悪い、ということで知られていますが、私もお尻のポケットにさいふは入れず、バッグは背負ったり肩にかけたりせず、片手でしっかり持って絶対に手離さないようにしていました。
なにせナポリは初めてだったのでトラム(路面電車)やバスに乗っていても、街中を歩いている時も最初はチョット緊張気味でした。
トラムの車内にもこのような「スリ注意」のポスターが貼ってあるのですから。
でも、他の観光客を見るとバックパックを背負ったり、会話に夢中で持ち物から目や手が離れている人も多く、特別注意している様子もありません。
慣れとは怖いもので、私も市内の地理が把握できてきて、見慣れた風景になってくると徐々に警戒心が緩んできました。
その日もホテルへ帰るため海岸沿いを走るトラムに乗っていました。満席だったのでドア近くに立ってボーっと海を見ていました。
すると突然、反対側のドアの近くで男性二人が大声で言い争いを始めたのです。一方は鞄を自分の方に引っ張っていました。
「これ、スリの現場じゃないのか?すられた人が途中で気づいたんだ。いや~、やっぱり実際あるんだ」と再認識したのです。
2人のすぐ横には、あの「スリ注意」のポスターが貼ってあったんですがね。
・手渡し詐欺
日本で繁華街や駅前などでサンプル商品やティッシュを配っているのはよく見かける風景です。
これと同じ感覚で海外(どの国だったか忘れました)の観光地でニコニコ顔で何か配りものをしている人から出されたものをなにげなく受け取ったことがあります。
すると直後に「○○ドル(その国の貨幣単位)」と言ってきました。でもけっして高額ではありません。
「要らない」と言って返そうとしても受け取らない、「あなたは受け取った。だから支払って」とくるわけです。
言い争ってもむだと思い、渡されたものをそっと路上に置いてさっさとその場を離れました。それ以上追ってくることはなく、相手もあきらめてもう次の獲物を探していました。
・ガイド詐欺
タイなどの東南アジアの観光地で体験しました。ツアーではなく、個人で遺跡などの観光地を巡ったりしていると遭遇します。
さも、ボランティアであるかのように寄ってきて「私は詳しいので案内しますよ」と言うのです。そして終わった後に「ガイド代をください」と言ってくるパターンです。
最初から一切相手にしないのが一番です。
自称ボランティアガイドに遭遇した場合、私はいつも「OK、案内してください。ただしガイド料は払いません。それとみやげ物屋にも行きません」と最初にはっきり言っています。
中には純粋にボランティアで個人的に外国人に接したい、という人もいるのです。やはり地元の人なので詳しかったりするんですよね。
・詐欺ギリギリ?
これは正確には詐欺ではないかもしれませんが、観光地で例えば民族衣装を着ている現地の人などの写真をなにげなく撮ったりすると、直後に「撮影代○○ドル」といって手を差し出してくるパターンがあります。
「エッ、観光客相手のサービスじゃないの?」と言いたくなりますが、この場合はしかたなく払いました。撮る前に無料かどうか聞いてみるのが一番です。
最後に蛇足ですが、海外のレストランや食堂などで支払いの時は、注文した明細を確認した方がよいです。
注文していないものや違うものが書かれているときがあるからです。詐欺や故意ではなく、単純に他のテーブルの注文を間違って書いているのです。
某国でも現地に住んでいる人から「必ず確認した方がいいですよ」と自身の体験談を交えて言われたことがあります。
以上、いくつか紹介しましたが、日本の治安のよさに慣れ切っていると「疑う」ということを忘れてしまっています。
海外では小さい罠や落とし穴が気づかない所に隠れているという意識でいた方がよろしいようです。
ばってんT村でした。
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